月刊ライフビジョン | off Duty

仮設を出られない人たちを忘れない

曽野緋暮子

 11月24日宮城県南三陸町で第16回復興グルメF1大会が開催された。昨年は西日本豪雨のため中止。今年は台風19号等による災害が相次ぎ浸水被害を受けた参加予定の方達もいたが、参加を目標に頑張るとの宣言で実施となった。

 私は同行者がいなかったので前日の22日、以前から気になっていた福島県南相馬市小高区に立ち寄った。小高駅前や、小高交流センターをはじめとする建物や店舗が次々増えている様子を見て、小高は波に乗り進化していると実感、うれしい気持ちになった。

 翌23日、仙台から高速バスで南三陸町へ。ボランティアバスより一足先に会場入り。地元の主催者と一緒にイベント準備に取り掛かった。ボランティアバスが到着したが参加者はいつもより大幅に減り、大学生、専門学校生がいないのでちょっと静か。今回、同じ日程で台風19号の災害復旧ボランティアバスが丸森町に向けて出ているので、その影響もあるようだ。

 復興グルメの会場が魚市場であることから、床掃除から始めた。机・椅子、復興グルメの幟のセッティングを終了後、本番のブース担当が発表されると、私は一番苦手な受付でのチケット販売だった。

 準備終了後「さんさん商店街」で昼食とお土産購入タイム。各自でお店を物色し、私は思い切って南三陸名物「キラキラ丼」2,300円を完食。美味しかった!!!

 次に気仙沼市に移動。気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館に行った。ここは東日本大震災で津波被害に遭った気仙沼向洋高校の遺構で、今春オープンした。遺構として残すことに賛否両論があったそうだが、残してもらって良かったと思う。3階の教室に飛び込んだままの車、倒れたキャビネットと共に転がっている泥まみれの数台のパソコンやプリンター等が、瞬間的な力の凄さを実感させる。見学最後に上映されたVTRは階上中学校卒業式の様子だ。当時ニュースで観たはずだが、梶原雄太君の答辞にはあちらこちらかもすすり泣きが起こっていた。8年経っても忘れられない光景だ。

 その後、気仙沼市内で唯一残っている仮設住宅に行った。小高い坂の上にひっそり、数棟の住宅が建っていた。様々な理由で仮設住宅を出られない人達がいることを忘れてはいけない。

 24日復興グルメF1大会当日、小雨混じりの悪天候でお客さんの出足が良くなかった。但し、三陸沿岸駆け足視察の安倍総理大臣が来場した20分間前後はSP、警備、行政、地元代議士、報道陣等の黒いスーツ姿の人達で埋まっていた。地元の人達は総理大臣と写真を撮ろうと大騒ぎだった。グルメ各ブースでも一緒に写真を撮っていたようだ。受付にいた私には黒い集団が動く姿しか見えなかったが、ボランティアの女子高校生がスマホ片手に走って来て、「総理大臣が頑張ってくれてありがとうと言って、一緒に写真を撮ってくれた」と大はしゃぎで話してくれた。この子達が今日のことを励みにしてボランティアを続けるのならばとても良いことだと、素直に思った。

 客足は終日伸び悩み、今までで最低の来場者数だった。秋の連休でイベントの多い時期だったこともあるが、続けて催行するには何らかの方法を考える時にきているようだ。事務局の最後の挨拶でも、災害がいつどこで起きるかわからない、復旧だけでなく復興モデルとしてこの「復興グルメF1大会」は続けて行きたいと言われていた。私も微力ながら支援を続けたい。