月刊ライフビジョン | 社労士の目から

北京の街は活気にあふれていた

石山浩一

 10月18日から3泊4日で北京へ観光ツアーに行ってきました。台湾や香港にマカオは訪れたことはありますが、中国本土は始めてです。世界最大の14億人の人口を抱え、世界第2位の経済大国の首都北京の現状を4日間だけですが体験することができました。

 最初の2日間の天候は真昼なのに太陽が霞んで月のように白く浮かんでいました。黄砂ではと思ったがガイドが黄砂なら鼻炎になるが、鼻炎にはなっていないのでガスによって霞んでいるとの説明でした。確かに大気汚染という感じはなく、幸いに雨も降ることはなかった。あとの2日間は高く澄んだ青空が果てしなく広がり、公園の木々も色付き始めて「北京秋天」を連想するような快晴でした。

“街に溢れる人と車”

 下町や世界遺産に登録されている観光地を巡ってきましたが、訪れる場所すべてで人や車で溢れていました。金曜日の午後は下町「胡同」の散策でした。一般の人が普通に生活している地域ですが、狭い路地に汚れたベンツなどのヨーロッパ車やホンダ等日本の車が所狭しと駐車してあります。その車と車の隙間にオートバイが停めてあるのですが、どうやって車を動かすのか不思議に感じました。ガイドによれば、朝の6時までに動かせば違反にはならないということです。それにしてもそこに駐車できない人はどこに駐車するのだろうか、聞いてみたかったが後の祭りでした。

 世界遺産の頤和園(いわえん)に日曜日の朝9時ごろ訪れましたが、すでに入り口は大勢の観光客で賑わっていました。その時点での入場者数が6万人だそうです。これから増え続けても公園の広さが290万平米(東京ドームの約62倍)あり充分収容可能なようです。そのほか見学した世界遺産の天壇公園270万平米(東京ドームの約57倍)であり、テレビでよく見る天安門広場は44万平米(東京ドームの約10倍)の広さがあります。そのほか故宮院(紫禁城)に至っては700万平米(東京ドームの約159倍)と、遠方が霞んで全景をみることが難しいほどの広さでした。国土が広いことが公園などの広さに関係しているのでしょうが、その広さに圧倒されました。そして公園等にはごみが落ちていることはほとんどなく、よく手入れされていて、道路も同じですが人海戦術によるようです。

 幹線道路は大部分が片側6車線で両側12車線ですが、それでも上海に次ぐ渋滞で有名とのことです。私たちのバスもその渋滞にはまり、8キロを走るのに1時間かかり、途中寄る予定の店をスルーしてホテルへ戻ってしまいしました。ツアーは21日が最終日でしたがホテルを出発する時間になってもガイドが来ません。要人が空港に向かうため、道路が封鎖されたあおりで渋滞となっての遅刻とのことでした。その要人とは日本の天皇陛下の即位礼正殿の儀に出席する王岐山国家副主席と後で分かりました。

 なお万里の長城も観光客用の登山口から登ってきました。そこは傾斜が約20度の女坂と50度以上の傾斜がある男坂があり、勇気をだして男坂に挑戦し第3ゲートまで登りましたが、息も絶え絶えで足はがくがくでした。

発展する中国の可能性を実感

 今月1日に中国は建国70年の節目を迎えました。速いスピードで発展する中国ですが、習主席が「2035年までに現代化建設の基本的な完成」と2017年の中国共産党大会で述べています。その完成後にはGDPで米国を抜くことが含まれているという。その根拠は定かではないようですが、今回のガイドの話にその可能性を感じました。

 ガイドの話では2008年の北京オリンピックで都市部の近代化が一気に進み、賃金も上昇したと言っています。しかし、地方の農民の賃金はかなり低いのが現状で、地方のレベルアップが課題で政府も力を入れているとのことです。ガイドの現在の賃金は12万8千元で、党の要職にある奥さんは13万元だそうです。奥さんは当然共産党員ですが、ガイドは本人の信念として党員にはならず、そのため昇進はできないがそれでも構わないとのことです。中国では60歳が定年で、定年後は定年時の賃金と同額の年金(ガイドは賃金と言っていました。)が支給されるので生活には困らない。定年後には観光地を訪ねたり、公園でトランプに興じたり、踊ったりして暮らすのだそうです。

 観光地で同じ色の帽子を被っているのは地方からの観光客とのことですが、赤や青などの色のついた帽子がかなり目立ちました。そして公園などでトランプをしている人や踊っている人も大勢見かけましたが、地方の生活も都会に近づいている証ともいえそうです。現在農民は月に10元の年金保険料を払い、60歳になると月に120元の年金が支給され、地方の生活も向上すると力説していたのが印象的でした。

 観光地では女性がトイレに並んでいると中国人の観光客が勢い良く割り込んできたり、道路を走る車も事故にならないかと心配するような割り込みを平気でやっています。ガイドの話ではこれまでそうした躾や教育がなされていなかったためで、90年以降の子供たちはそうした教育がされているので大きく変わりますと話しています。ガイドは40歳代半ばの、14億分の1に過ぎない男性ですが、中国の将来を生き生きと話していることに、中国の将来の明るさを感じたものです。日本の高度成長期の時代と同じだったのだろうと思いながら帰国しました。


石山浩一
特定社会保険労務士。ライフビジョン学会代表。20年間に及ぶ労働組合専従の経験を生かし、経営者と従業員の橋渡しを目指す。   http://wwwc.dcns.ne.jp/~stone3/