月刊ライフビジョン | ビジネスフロント

にわか弱者のつぶやき

おかぼん

 私事で恐縮だが、今月に入り下肢に痛みが走り、ちょっとした距離の歩行が困難になった。ものの数分歩くと下肢に痛みが走り、しばらく座ったりしゃがみ込んだり、それが無理でも前傾で立ち止まると痛みが引いてまた歩けるようになる。これを間欠性跛行と言うらしい。病名は腰部脊柱管狭窄症で、主な原因は加齢だという。何とも厄介な病気だが死に至る病でもなく、治療を続ければ大方漸次痛みは治まるらしい。

 年がら年中走り回っていた私にとって、まさに青天の霹靂であり、走るのはおろか、まともに歩けないというのはこんなに大変なのかと改めて思い知らされた次第である。何とか工夫をして座れる電車を探し、通勤ルートを変更してかろうじて通勤できてはいるが、帰宅するともう疲労困憊である。

 それにしても、通勤電車も以前のような激混みは緩和され、また駅という駅はバリアフリー化によりエレベーターやエスカレーターが設置され、階段の上り下りもかなり楽になった。路線バスも殆どが低床式だ。また、高層ビルの谷間には自由空間が生まれ、適度にベンチが配置されているのはありがたい。健康な身体で、道をガンガン小走りで歩いていたときは気づかなかったが、結構社会的弱者に配慮された優しい世の中になったと感じている。

 もちろん、まだまだ至らぬことも数多い。たとえば、自由空間のベンチと言っても屋根はなく、雨が降って濡れてしまえばちょっと腰掛けて、というわけにはいかない。また、毎日通る通勤経路であるからこそ、どこに休める場所があるかは分かるが、初めての場所だと全く見当も付かない。

 そういえば昔は公衆トイレを探すのにも苦労した。今はコンビニがあればほぼトイレがあるので困ることはなくなった。同様に、ちょっと休めるベンチ一つにしても、例えばコンビニの軒先やバス停の屋根の下には必ずある、といったようなことがあってよいと思う。

 今回、自分の足が不自由になったことで社会的弱者から世の中を見る良い機会になった。とともに、普通に健康であるということがいかに素晴らしいことであるか、を改めて思い知らされた次第である。