月刊ライフビジョン | off Duty

人間以上ロボット未満

曽野緋暮子

 何をしようとして立ち上がったのか、何をしようとしてここに来たのか、等々物忘れをするようになった。暫くするとポンと思い出すので認知症ではないだろう。

 当然、買い物には買い物メモ。そのメモも思い付いた時に書き込むので2~3枚になる。各部屋にはメモ紙とボールペンを置いている。思い付いた時にパッと書いてポケットにしまう。最近では「やる事」までメモ、頭をよぎった思い付きもメモしてポケット。明日以降のメモ書きの内容は手帳に書きこむ。そのため私の手帳は在職時より真っ黒になった。側溝の掃除、草取り、除草剤撒く、なんてことまで書き込んである。「毎日が日曜日」生活だと「1日何していたんだろう?」と空疎感にとらわれることも多い。そんな時手帳を見て、「そうか、家の外周掃除で一日を終えたんだなあ」と妙な安心感が得られる。働き蜂の習性か。

 ある日仲間の一人が、スマホのスケジュールアプリで次の山行スケジュールを確認しているのを見た。なるほどスマホだと常時携帯しているし、数年前の予定も数ヶ月先の予定もすぐに確認できる。これって良いかも。

 帰宅後、スマホのスケジュールアプリを起動し、友人との約束、美容院の予約日、歯科の予約日等を入力した。使い勝手は良さそうだ。今まで出かける時には手帳が必携だったが、これからは不要になりそうだ。

 ちょっと面白くなっていろいろ使ってみる。スケジュールを書き込むことは問題ないが、ちょっとした気づき等のメモ書きができない。そうか!アプリのメモかノートに書き込めば良いんだ。スケジュールの余白に書き込んでも良い。

 こうなるとスマホが手放せなくなる。朝起きると同時にエプロンのポケットにスマホを入れる。何か思いついたらスマホに入力する。そして、就寝前にスマホスケジュールを見て今日「できなかった事」を翌日に送る。翌日がムリだったら適当な日に送る。

 こんなことを続けている内に、スマホスケジュールにも「手帳真っ黒状態」と同じことが起きてきた。手書き手帳時代にも日常の細々したことを書き込みし過ぎて、肝心な要件がなかなか見つからないことが多々あった。若い人だったら難なく済ませるスマホ入力が、私には結構時間がかかっている事にも気付いた。「やるべき事」を簡単に繰り延べできるので、先送りすることに後ろめたさを感じにくくなってきた。スマホの小さい画面に文字を拡大表示しているので、頁の全景を一度に見ることができないことにも少しストレスがある。毎晩スマホを見ながら今日一日を振り返り、スケジュール編集していると、スマホに使われているような気分になってきた。

 そんなある日、新聞で「ToDoリストに追われる」とのコラムを目にした。日々をスマホの「ToDoリスト」で管理されている自分に気付いた。やるべき事をスケジュール通りにこなすことは気持ち良いが、1年365日それをするってロボットだよなあ~。反省!!!

 友人との日程調整や、各種予約時にはスマホのスケジュール。忘れても害のない日常のやるべき事、買い物メモは以前の手書きメモに戻した。

 誰かに聴いた。健康を保つには、一十百千万が大切。1日1回笑うこと、1日10人の人と会うこと、1日百の文字を書くこと、1日千の文字読むこと、1日1万歩あるくこと、と。買い物メモでも1日百文字の足しになる。健康のためにスマホ離れすることも一考かと思い始めた。