月刊ライフビジョン | ビジネスフロント

批判票の行き場がない日本の不幸

司 高志

 森友といい加計といい、首相の好き放題である。
 森友関連はガードの固い財務省からは確かな証拠もないが、加計関連については、ややワキの甘い文科省から首相の関与をにおわせる文書が出てきた。ただし情報源がかつて偽メール事件を起こしたM進党なので、今回もガセネタの可能性はある。
 決定的な物証がないとはいえここまで状況証拠がそろってしまっては、首相のやり放題も目に余るのだが、当の首相はどこ吹く風の涼しい顔である。この原因は何なのか?
 それは首相およびG民党が、いかなる悪事を働こうが限りなくクロに近かろうが、犯罪ででもないり次回選挙に負ける要因がなく、追い落としは不可能だと認識しているのだろう。NHK放送文化研究所の政党支持率を見ると、支持率が2桁台は「G民党」と「支持なし」だけであって、その他はすべて1桁台である。現政権が不適切なことをしても、支持率には一向に影響しない。
 筆者はこれを、首相やG民党への批判票が行き場を失い、G民党にとどまっているのだと推測している。言葉を換えていうと、国民の側に首相への批判はあっても、代わりの受け血になるべき政党がなく、批判票の行き場がないので変化しない、という解釈である。
 ではなぜ、批判票が動かないのか。
 有権者にはM主党の時代の失策がしっかり記憶されている。G民党とM進党はどちらもだめだが、G民党のマイナスに比べてM進党のマイナスの方が遙かに大きく評価され、いくらG民党がだめでもM進党に比べればまだマシ、として支持率は移動しないのである。筆者にはそれ以外に、有力な説明方法を思いつかない。
 M主党の支持率にマイナスの影響を与えているのは、有権者の学習効果に加えて、党首の二重国籍問題、異常なガソリン使用量の議員問題などが、何の進展も見せていないことである。国民から見ればG民もM進も似たり寄ったりとなり、それならG民のままでいこうかとなる。これでは支持はG民からM進に移らない。
 さらに加えて、G民党にもの申したことが自らに帰って来るというブーメラン現象についてはお家芸である。このブーメランに対しても対処をしていないので、G民を追求しても、M進党もできてないじゃないか、という批判に耐えられない。
 視点を変えて東京都に注目すれば、東京都知事を中心とした都民FとG民党とが相互牽制の関係にあり、G民党に対する批判票の受け皿は用意されている。どちらも下手なことをするとすぐに、都民の支持が得られなくなるので緊張関係にある。
 都知事が都民Fを作るにはそれなりのリスクをくぐってきた。方やM進党は党の名称の変更とか党首の交代とかのマイナーチェンジで終わって、リスクをとろうとしてはいない。リスクをとる努力もしないで、よい結果だけが生じることはない。
 M進党の歩もうとしている道を筆者なりに読み解くと、今まで貯めた政党助成金を使い切るまではそれなりの活動をしておけばよい、という戦略ではないかとみている。
 マイナーチェンジを繰り返すM進には票は集まらず、当分はG民一強が続く。異変が起きるとしたら、政党助成金の貯金を使い尽くしたM主が本当に動くときであろう。何もしなければ、小さな政党になるか、政党の要件を満たさず、自然消滅のような形になるかもしれないと、筆者は予測している。