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5円玉の御縁

おかぼん

 2024年度に1万円札、5千円札、千円札の紙幣が刷新されるという。また、500円硬貨も2021年度に変更されるという。偽造防止がその目的と言うが、紙幣刷新に伴う経済効果その他、政府にはいろいろ思惑があるのであろう。

 タンス預金が吐き出されるのでは、という話も聞くが、政府が終戦直後に行った「新円切り替え」でも行わない限り限定的であろう。20年ごとの周年行事とみるのが妥当である。

 ところで、政府は古いデザインのお札もそのまま使えます、と盛んに宣伝しているが、実際のところ、戦後はこの「新円切り替え」のみと言っても過言ではない。その後、1953年の小額通貨整理に伴い、1円未満の紙幣を含めた通貨が使用停止になったが、これはちょっと性格が違うものである。

 その結果、いずれの使用停止も切り抜けた戦前の1円札の中には未だに使用停止になっていないものがある。1885年発行の大黒天の1円札はその最たる例であろう。

 硬貨はどうか。こちらも1円以上の硬貨で使用停止になったのは、戦前の金貨銀貨を除けば1948年から3年間発行された1円黄銅貨のみで、500円硬貨を除いてその図柄さえも長く変更されていない。5円硬貨に至っては、字体の変更を除けば、何と70年間同じ図柄である。

 そろそろ変更したらとも思うが、1円硬貨同様5円硬貨も製造コストが原価割れしているようで、なかなかそうもいかないのであろう。

 それにしても、70年と言えば親子3代以上にわたって同じ図柄の硬貨を使い続けているわけで、私の子供の頃には考えられなかった。日本銀行は2%の物価上昇目標と言うが、景気さえ悪くならなければ物価は上がらないに越したことはなく、70年と言わず100年までも末永く使い続けられることを望みたい。