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経営者はきりきり、出すものを出せ

おかぼん

 1月18日の日本経済新聞1面に「株主還元5年で2倍に」「『人への投資』課題」という見出しで、企業業績が堅調の結果稼ぎ出された現金が、事業のデジタル化などで設備投資に向かわず、そのデジタル時代の競争力を左右する「人への投資」へも向かわず、自社株買いや増配を中心とした株主還元に向かっていると書かれている。

 この5年間で株主還元が2倍になったということだが、人件費はどうかというと経常利益が36%増えているにも拘わらず、僅か14%増に止まっているという。株主還元は上場企業、人件費は資本金10億円以上の企業で論じているため、数字をそのまま当てはめて比較するには問題があるが、大きな傾向をつかむのに無理はないだろう。

 結果として労働分配率は低下の一方で、過去4四半期の平均で44%と、この5年間で4ポイントも低下したという。もっと驚いたのは、その結果として5兆円が余剰となり、手元資金が106兆円に積み上がったということである。

 今年10月に消費税が10%になる。その緩和対策に政府は相当な予算を振り向けるようだが、そもそも増税分の賃金が上がれば景気に大きな影響はないわけで、昨年度余剰になったという5兆円を人件費に回せば、それだけで相当緩和されるはずである。

 もっともこれは総論の話で、各論となれば業績のよい会社もあれば悪い会社もあるわけで、消費増税分を一律賃上げというわけにはいかないのは当然のことである。しかし、よい会社が悪い会社に遠慮して、何もしないで手をこまぬいているというのでは話にならない。

 まもなく春闘の季節がやってくる。経営側はことあるごとに「賃上げは生産性向上の範囲内で」「利益はボーナスで還元する」としてきたのであるが、その利益がどんどん積み上がった結果がこの数字である。労働側の奮起に期待したい。