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国民を見ない政経人をなんとするか

司 高志

 目下の日本では「労働環境崩壊」としか思えないような事件が目白押しである。

 車のN産では、会長が一生かかっても使い切れないような給料を一年でもらいながら、更に給料をごまかす、会社の金で住宅の便宜を図ってもらうなど、欲には限りがないことを見せつける。しかもこの金は、従業員の解雇と下請け泣かせで稼いだ金から捻出されているわけだから、労働者が幸せになれるわけがない。もはやどこまでもガメツい前東京都知事と共通するものがある。

 そうかと思えば、爆発事故を起こした札幌の不動産屋もひどい。部屋の消臭・除菌などはオプションだったものを必須と思わせてお金を払わせておきながら、実際には消臭・除菌などを行わず、不動産屋の部屋で使わなかった除菌・消臭剤のガス抜きをせっせと行っていたところの爆発事故だ。しかも、消臭・除菌にはノルマがあったらしいから、会社ぐるみの詐欺と言ってよかろう。

 他方では技能実習などと命名して外国から安い賃金で働く労働者を招き入れて、技能実習とはほど遠い、福島で放射能除染をやらせたり給料を十分払わなかったりと、やりたい放題。この技能実習制度がどうにも世間の評判が悪いとなるとこの制度を放置したまま、今度は外国から労働者を雇い入れようという新たな悪だくみが進行中だ。

 ところで話は変わるが、貿易というものが互恵的に行われるのであれば、お互いが得意な分野で生産して融通をつけ合うというきれいな形で収まるのだが、いかんせん今の貿易は弱肉強食、植民地政策の延長線上のような戦いで、負けた方は貧困にあえぐことになる。

 貿易競争が行き着くところまで行けばどの様になるのか、想像力を働かせるべきだったが、日本は貿易で戦えば常勝間違いなし、という誤った思い込みで参戦してしまった。

 国内の労働環境の整備を故意に放置したまま、ブラック経営には見て見ぬふりをして、年休未消化、サービス残業当たり前という風潮で、さらに成果主義とか派遣労働を持ち出して、労働者の賃金を下げることばかりに血道を上げた。

 その結果、収入の面から未来に希望が持てなくなり、結婚がしにくくなった。このままの給料では複数の子供を育てるのは無理と思う人が増え、子供の数も少なくなった。

 そして先に本欄でも述べたとおり、シニアを労働市場に放り出すという画策があったが、それもほんの序の口で、実は、さらに安い働き手を外国から入れてしまおうという、いわば禁じ手を行ってしまった。

 会社が存在するのは、その製品や提供するシステムで社会に貢献するためである。会社はそこで働く人の給与と働きがいを提供して、社会に必要な機能を提供する存在のはずだったがもはや、そのような綺麗事の通用する国ではなくなってしまったようだ。会社の存続のためには手段を選ばず。結局最後に生き残るのは人間ではなく、会社という入れ物だけ。そこから高額な役員報酬をたんまり手に入れられる人ばかりが潤うという、なんともやりきれない世の中になってしまった。

 外国人労働者の招き入れを見ていると、今のG民党に任せていては、完全に手遅れになるまで突き進むだろう。どの政党に変わっても妙案が出そうもないのだが、労働者や国民を優先した政策への転換を志向する人たちの集団が是非必要だ。その一つが当学会であると思う。

 筆者としては本欄を通じて、少しでも世の中の役に立つ文章を書きたいと思っている。今は投票を欠かさないことと文章を書くことくらいしかできず、時々力が尽きそうになるが、2019年も頑張って生き、話し、かつ書きたいと思っている。