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乗り合いバスと道交法の矛盾について

おかぼん

 自宅から最寄りの駅まで約2.5kmある。歩くには少し遠い距離なので、天気のいい日は自転車で、雨が降れば路線バスでの通勤となる。

 私のような行動の客が相当いるようで、雨の日は混雑がひどく、途中の停留所からは『満員通過』となる。雨の日に傘を差し、次に必ず乗れる保証もないバスを待つ客の心境はいかばかりか。

 さて、そんなバスの中は座っている客を除けば、握り棒やつり革をしっかり持って立っていられれば幸いな方で、いつ開くとも分からないドアに寄りかかって立つ人や、斜めに立っている人などもザラである。

 こんな状態で急ブレーキを掛けたあげく、他の車両にぶつかるような事故でも起こしたらどんなことになるだろうか。けが人が出ることは必至で、場合によっては死者が出る可能性も十分にある。想像しただけでも恐ろしい。

 ところで、道路交通法では自動車走行中のシートベルト装着が義務化されており、違反すれば当然のことながら反則金が課せられる。しかし一般の路線バスでは、シートベルト装着云々の前に、そもそもその装備がない。道路運送車両の保安基準で装備を義務付けされていないのである。

 なぜか。おそらくは多くの乗客が短距離利用で、いちいちシートベルトの着用をしていたら運行に支障をきたす、というのが最大の理由だろう。また、座席定員厳守となるので満員通過で乗れない客が増えることも容易に想像できる。

 しかし、である。一般道の法定速度は60㎞で、市街地は概ね40㎞に抑えられているとはいえ、衝突事故が起これば惨事は免れない。

 交通事故に限らず最近は、何か事故が起こるごとに関係者から『想定外』という言葉が頻繁に発せられる。しかし、シートベルトのない路線バスが衝突事故を起こすことは想定外なのだろうか。決してそうは思わない。しかし、だからといって解決策も容易に思い浮かばない。

 ひたすら事故が起こらないことを念じるのみで、悩ましい問題なのである。