月刊ライフビジョン | off Duty

ボランティア出動日誌-直接被災地を見てほしい

曽野緋暮子

 8月末、年上の友人から「少し涼しくなったので参加してみたい」と電話があったので、9月1日に予定していたボランティアに合流してもらうことにした。

 福山駅北口からボランティアバスでボランティアセンターへ。センターで行先を指示されると友人とは別の、市内でも全く読み方さえ知らない、行ったことのない場所だった。そこは7月6日に自宅で、お母さんと一緒に流された3歳の女の子が亡くなった地区だと聞かされた。荷物を置くために地区の集会所まで歩いた。被災状況に唖然とした。市内にこんなに大きな被災地区があったとは!

 この地区は河川の決壊でもなく、崖崩れでもなく、ため池の決壊による被災だ。ため池のすぐ下に駐車場があった。ため池の決壊で大きな岩塊や樹木に加えて、駐車場造成に使われていた大きなブロックの塊が家々を通り抜けて行ったそうだ。地元の方によると午後6時頃の、一瞬のできごとだったそうだ。歪んだ家の枠組みと部屋の上部に取り付けられているエアコンが、被害の大きさを語っていた。まだ新しい2世帯住宅だった。

 私たちの作業はその家の少し下方の住宅の、壁や床下の泥の撤去だ。約2ヶ月経っているので柱の傍や家の隅では泥が固まり、ガリガリとこそがなければ取れない。逆に床下はちっとも乾かず、半分ぬかるみの泥が重い。7月、8月の酷暑を思えば暑いとは言え、作業20分、休憩10分で何とか依頼主の要望をクリアできた。ついでに周辺の畑の瓦礫ゴミも撤去した。ボランティアセンターにひと足早く戻っていた友人は、家屋の泥出しだったが何とかクリアできたと満足気だった。

 9月9日は9時9分発のJR経由で井原線に乗車。ボランティアしたいけれど体力がないと言う友人達を誘って、「被災地を視る&観光するボランティア」だ。広島県福山市神辺町と岡山県総社市を結ぶ井原線は高架鉄道で、電気系統がダメージを受けて一部運休していたもので、9月3日全線開通していた。井原線は小田川沿いを走るので西日本豪雨の被災地を通る。マスコミ経由ではなく、自分の目で被災地を見て貰いたいと計画した。

 最初はお喋りが弾んでいた一行は、矢掛町、真備町と被災地が目の前に広がると寡黙になった。真備駅周辺は人も通らず、車も通らず、枠組みだけ残った住宅地が延々と続く。テレビ画面で切り取られた光景ではなく、直接目にする現場に友人たちは声もなかった。何をする術も持たない私達は、真備町駅で下車する勇気はなかった。

 総社駅で折り返して同じ列車で矢掛駅に下車した。矢掛町も小田川沿いで被災したが、商店街は復興しているのでランチ&買い物ボランティアだ。ランチのお店で奥さんが当時の避難の様子を話してくれた。まさかと思っていたが2階に物を運び上げ、何とか大きな被害を免れたそうだ。矢掛町も観光客が8割減とかで、ちょっと遠いけど、ランチする時はここまで足を延ばしたら良いねと話しあった。

 9月12日、三原市本郷地区にボランティアに行った。ボランティアさんが減っていて、バスの着席は半分に満たない。ボランティアセンターも幾分ひっそりしている。先回同様に竹木舞の間の泥出しが予想されたので、ドライバーや割りばしを道具に加えて貰って依頼者宅に行った。決壊した沼田川の土手が見える住宅地で、川の氾濫で直撃された様相の住宅だ。床下の泥を出す作業と、壁と竹木舞の泥を落とす作業に分かれて取り掛かった。雨模様で暑さは感じないが、疲れが残らないように20分作業、10分休憩で進めた。昼休憩は駐車場で立食。トイレは使えるそうだが水が出ないとのことで作業終了まで我慢。暑さが無いので作業は順調に進み、依頼分は何とか終了した。当家の方はどこか避難されているらしく、依頼主の代わりに熊本からのボランティアさんから挨拶を受けた。

 9月に入り、台風や地震で北海道、関西等日本全国で災害が起きている。災害の大きさが気になるが、今は地元近くのボランティア、支援を最優先で進めるしかないと思っている。