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道徳教育は、AIがやることになったとサ

司 高志

 むかーし、むかし、日乃本の国にABE総統という相当えらい政治家がおった。そのころの日乃本は、選挙で投票をして政治家を選ぶのが普通じゃった。選ばれた政治家は、講を作って政治活動をするのじゃが、ABE総統の政治講は数が多かったので、日乃本の民のことをあまり考えず、えらーい政治家である自分の言うことを民が聞くのは当たり前じゃと思っておった。

 ABE総統は自分に反対する衆には強気の発言を見せておった。政治は数が多いことがすべてを決めてしまうので、ABE総統が大嘘をこいても誰も咎めることができんかった。

 ABE総統に反対する衆は、なんで日乃本の皆の衆がABE総統の講に投票するかまったくわからんかった。この人たちもあんまり反省はしていないようじゃった。

 ある時ABE総統の女房が、お役人のところに文を送って、自分がひいきにしている学校の土地のことを聞いてしもうた。これを見たお役人が驚いて、こりゃあ何とかせにゃあいけん、というて土地の大幅な値下げの工作をした。

 ABE総統の女房がひいきにしている学校の偉い人は、お役人たちに無茶を言って、自分の学校にたくさんお金を出させておった。このことは違法なことじゃったので、学校の偉い夫婦は捕まってしもうた。じゃが、ABE総統の女房はおとがめなしじゃった。大幅な土地の値下げをさせられて、ことの次第を書いたお役所の文を書き換えたお役人が自らの命を絶ったが、張本人たちは知らぬ顔でぬくぬくと生きておった。

 またある時は、ABE総統のお友達が、学校を作ろうと思うとったが、お役人がなかなか許可をしてくれんかった。学校を作ろうとしている話を聞いたABE総統は、「いいね」と言ったらしいが本当のことを知るもんは誰もおらんかった。

 それからABE総統は、ええことを教えちゃるといって、特別な地域には学校ができるんようにするんで、そこに学校を作れやと教えちゃった。お役人も、K3大学など他にも作りたい人がおったのに、ABE総統のお友達にだけ、丁寧に教えちゃった。お役所からは、ABE総統が絡んでいるらしいという文が出てきたが、ABE総統は、そげなものは知らん、と言うてしらを切った。日乃本の民に、えこひいきしたらいかん、というて責められても、これもまた知らん顔じゃったそうな。

 それから、ABE総統は、日乃本の他国でいざこざが起こっとるときに、ちょっくらいって手伝うてこいや、というて防衛をするお役人をよその国に派遣した。本当は、いざこざで鉄砲を撃っとるようなところには、お役人を派遣できんかった。ABE総統に反対の衆が、「毎日日記をつけとると思うんじゃが、日報を見してくれや」というた。

 防衛のお役所の一番偉い人は、ABE総統の講だったので、お役人に適当に探させて、そげなもんはない、と答えた。

 ところがこれも、日報があることがわかってしまい、嘘をこいたということにされたお役人が二人辞めた。

 そこでABE総統は、お役人たちを集めて、ないもんがあったり、あるものがなかったりするのは、全部お役人が悪い。文の管理の掟を厳しくするから、ちゃんとやって膿を出せ、と命令した。お役人は仕方がないので、どうにかこうにか文の整理をした。

 文の整理の掟は「公文書管理法」といい、ABE総統の歴史は日乃本公文書館に保管されて、日乃本の民はいつでも見ることができるようになった。

 ABE総統は、美しい国とかいうて、道徳の教育までしたかったようじゃが、大嘘をこくABE総統に道徳教育をさせてはいけんということで、今ではAIと対話して道徳教育をするようになったとさ。

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 先生、本当に日乃本にそんなことがあったんですか? ABE総統ってホントにいたんですか?

 はい、ABE総統は、日乃本の実在の人物です。これから皆さんの人工知能を使って、ABE総統について調べてみましょう。日乃本の民はどのようにすればよかったのか、人工知能と対話しながら良い方法を見つけてください。それでは皆さん始めましょう。

 … この物語はフィクションであり、実在する人物、団体とは一切関係がありません。