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超劣化! 前事務次官講演調査-首相は究極の確信犯-

司 高志

 前文科次官が名古屋の中学校で授業として公開講演を行ったところ、文科省から市教育委員会に対して嫌がらせのような調査メールが届いたとの報道があった。

 問い合わせ内容の概略は、「前次官は天下りに関わり、いかがわしい場所に出入りしていたが、そういうことを承知したうえで呼んだのか」という、言いがかりのようなメールである。

 調査の権限が与えられているにしても、こういう権限の使用の仕方は恣意的であるというほかない。調査が公平に行われているのであれば調査基準のようなものがあるはずであるが、それは存在しないように思われる。また、今まで行った調査の一覧を情報公開請求されたら困るのではないだろうか? 調査結果は行政文書だから勝手に捨てるわけにはいかないので、記録は残っているはずである。

 この件について、担当部署の長(局長)が口頭で注意されたようで、その注意についての報道があったわけだが、一連の流れを見てみると、果たして文科省が独自判断で行ったかというのは疑問が残るところであった。

 考えようによっては、一番得をするのは文科省である。すなわち、前次官を呼んだりすると問い合わせをするよ、問い合わせだけで済めばいいけど、何があるかわからないよ、という警告である。また、前次官に対しても、教育の場に出てきて講演すると他人に迷惑がかかるよ、というけん制である。報道されたことによる文科省のマイナスイメージよりも、今後の前次官の行動を制限する効果が大きい、とも考えられたわけであるが、それにしても問い合わせの文章がなんとも品がない。本物の公務員が書くような文章ではなかった。

 そこで、この文章を見た人たちからは、文科省へ外部からの圧力があり、問い合わせの文章を書かされたのではないかという憶測がなされていた。

 そうこうしているうちに、G民党の二人の議員が文科省に対して問い合わせを繰り返しており、その影響があってかなくてか、結局のところ文科省が市教委に問い合わせをしたのだという報道があったのである。

 文科省自身は、議員からの問い合わせが市教委への問い合わせ行為に影響を及ぼしていることはないといっているが、状況的には全く信じられない。もう一つに、文科省が市教委に問い合わせる文章を先のG民党の議員に事前に見せていることから、これはもう完全にG民党議員へのサービス(屈辱)に他ならない。

 当のG民党議員らは文科省への問い合わせを正当な行為であるとしているが、三権分立とは一体何なのかと、議員たちに問うてみたい。これはもう立派な圧力である。しかも、タチが悪いのは、国民からしたら限りなく黒に近い行為にもかかわらず、議員も文科省も厚顔無恥なことである。

 そこで首相の役割であるが、本来であればこのような真っ黒としかいいようのない行為は慎むよう、周りに注意喚起すべきであるが、自分にとって都合の良いことには口を出さず論功行賞を与え、勝手な行動を助長し、都合の悪い発言をする者には、今回のように嫌がらせをするのである。

 役人だって人間だもの。法に触れない程度には、ちょっとくらいいかがわしいこともしているだろう。役人にとって恐ろしいのは、出世への影響よりも個人の行為の暴露である。

 首相は自分が関わっていないのをいいことに、自分にとって都合の良いダーティーを見逃し、ダーティー行為を促進する確信犯である。

 人間としての良識や良心を発揮してもらいたいとは思うが、首相夫妻にこのかけらでもあれば今日の状況には至っていない。やめていただくしかない。