月刊ライフビジョン | off Duty

避難放棄防止・事前復興まちづくり

曽野緋暮子

 2月18日、第4回AMDA被災地間交流フォーラム「東北三陸沿岸復興支援と南海トラフ地震への備え」に参加した。

 このフォーラムは近年到来が予想される南海トラフ地震に備えて、東日本大震災の被災地から学ぶべきことが多くあるだろうと、東北三県の復興グルメF1メンバーと、地震到来が予想される徳島県、高知県の沿岸市町村と、支援拠点として名乗りを挙げた総社市、丸亀市等瀬戸内海沿岸の市町村で始まった。今回は企業の支援として岡山経済同友会の松田代表幹事が参加した。プレゼン、アピールの中で新鮮に感じた2件を紹介したい。

 最初に岡山経済同友会の松田代表幹事の話。

 海外の支援は国連経由が安心だとの考えから1月にジュネーブの国連人道問題調整事務所(OCHA)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、世界保健機構(WHO)、国連国際防災戦略事務局(UNISDR)、国際赤十字社、金融機関USBを訪問し、日本大規模災害時岡山拠点構想の紹介と理解を得て、国連機関との提携の可能性調査を行った。災害発生時に「日本政府からの要請が必要」との前提で、今後の協力体制を話し合った。

 一方国内では2年前からBCP(事業継続計画)に取り組んでいる。各部会では自企業を通じてできる支援を模索、一例として岡山流通情報懇話会ではいつでもフレッシュな物を支援できる方策に取り組んでいる。また各拠点での支援物資の事前備蓄に取り組んでいる等々。

 ※今までのフォーラムでは経済界の方の話を聴くことがなかったので新鮮で興味深かった。

 次は高知県黒潮町産業推進室友永係長の話。

 東日本大震災発生から1年後の2012年3月31日に黒潮町に突き付けられたのは、予想される南海トラフ巨大地震の最大震度7、津波34.4m、高知県沿岸到達時間2分という驚くべき情報で、住民の反応は「あきらめ」だった。逃げ場所がない、逃げても仕方がないから逃げないという「避難放棄」や、津波リスクが高い、高台に住宅地がない、もともと職場が町外で暮らし続けられないので故郷をあきらめる「震災前過疎」などである。

 そこで町は住民の「あきらめ」解消に取り組んだ。避難訓練を徹底的に実施。高齢者でも避難できるように避難経路確保、日本一の高さを誇る避難タワーをつくり、「避難はできる」と住民に徹底した。地元の食材で災害時に役立つ缶詰工場をつくり職場を確保し、過疎化に歯止めをかけている。気仙沼市でのヒアリングで、非常食は美味しく、優しい日(ひ)常食であるべきと知り、こだわりの備蓄缶詰を提供している。熊本地震の時には2万食を送ったが、仕分けする人がいない、スペースがない、重いので下積みになっていた等々、必要とする人へ届ける仕組みが必要ということも痛感した。その仕組みつくりにも取り組んでいるとのことだった。

 ※フォーラムで何度か耳にした事前復興街づくりのモデルケースだ。東日本大震災後ボランティアに行くと同時に体験を取り込んで対策していることが凄いと思う。行政が率先して取り組んでいることで職員、トップの意識の高さに行政もやるじゃない!と感心した。

 今回参加の行政市町村は、東北三県と深く関わって復興の難しさを痛感しているようだ。東北三県の方達からは土地、融資等法律に縛られて前に進めないことが多々あるとの意見、参加市町村から職員のボランティア派遣に規制があるので条例を変えたというトップの発言もあった。震災前復興計画、事前復興まちづくりを進める中で法律改正、条例改正等々、政治的要因も多く含まれることが分かった。これは参加市町村のトップの方々にしっかり考えて貰いたい。

 東北でも被災した経験を伝えつつ、町の復興を進めている。南三陸町観光協会では「防災キャンプ備え」というプログラムを作って実践訓練を学生、企業に提供している。また、黒潮町と同じく地元の海産物を使った缶詰工場を計画中だそうだ。

 東北の復興はまだまだだが、皆さん、前を向いて進んでいる。そして万が一南海トラフが来たら東北から駆けつけると力強く言われていた。内容の濃いフォーラムだったなあ~!