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劇場は終幕、だが混迷は続く

司 高志

 都知事の劇場は終幕となった。劇場は終わったはいいが都知事の党、M進党、リベラル系の新党と3つに分裂してしまい、現政権への批判票の行き場がまとまらなくなった。

 特に現政権に対しては、しっかり施策を行わなければ政権党から滑り落ちるという状況を作らないと、一強を好いことに好き勝手をやってもらっては困る。特区という裏に回って森友、加計問題をこそこそと進めることができるのも、選挙になったら負けないというおごりがあるからだろう。今回の衆議院選挙の結果ますます批判票の行き場がなくなった。

 衆議院選挙を振り返れば、M進党の前代表が都知事にすり寄り、都知事の方は、M進党がため込んだ政党交付金に目がくらみ、M進党との合流を進めることになった。

 都知事はM進党を丸呑みすると第二のM進党との批判を招く恐れがあり、M進党の低支持率をそのまま引き継いでしまいかねない。そこで、合流の呪文を唱える前に生け贄を捧げる必要が出てきた。このときと知事は思ったであろう。M進党の大物をバッサバッサと切り飛ばせば、それだけでニュースネタにもなり、支持率も上がると計算していたのではないか、と。

 世間や報道では、この排除発言が敗因であったとしているようだが、筆者は、これは直接の敗因ではないと思っている。

 都知事は、問題に対して旗印を鮮明にすることなく、答えを最後の最後まで引き延ばしてサプライズを狙うという、究極の後出しジャンケン戦略だ。だから都知事の党は、現政権の批判票の行き場なのかは明確でなかった。選挙後に都知事の党と現政権が一緒の方向を指向してしまうということだって考えられた。

 都知事の党の決定的敗因は、排除発言を聞いたM進党からリベラル系の新党ができてしまったことであろう。この新党は現政権と対峙する関係にあるから、現政権の批判票の行き場所になってしまったことだ。日本人は潔いとか、義によってあえて損な行為を行う人には味方する。この新党は、ご祝儀相場もあって上昇気流に乗った。余談だが、ご祝儀相場の効果も無くなってくると思われるので、今後どのように振る舞うべきかはなかなか難しい。

 間接的敗因は、都知事には信頼できる仲間がいなかったことだ。仲間とは利害を超えて行動を共にできる同志であるが、このような人が周りにいない。ひと山当てるのに近寄ってきたり、都知事の人気を利用しようという魂胆の人たちばかりだ。加えて都知事には仲間を作ろうという意識もないようだ。

 リーダーにカリスマがあるようなとき、組織のメンバーのまとめ役や諸々の事務手続きや経理など、手堅く仕事をする人が必要になってくる。しかし都民Fや都知事の周辺を見る限りにおいて、都知事をサポートする有能な仲間がいない。

 もう手遅れという気はするが、それでも仲間を持った方がいいというのが筆者の考えだ。でなければ、都民Fという組織が腐ってしまう。