月刊ライフビジョン | off Duty

第15回復興グルメF1大会in浪江に参加して

曽野緋暮子

 ことし3月31日に帰還困難区域を除いて避難指示が解除された福島県双葉郡浪江町で、10月7日に「なみえ復興祭」が開催されることになり、その目玉として第15回復興グルメF1大会を開催してほしいと、AMDA経由で復興グルメF1事務局(注1)に依頼があった。そのF1大会in浪江に参加してきた。

 10月6日午後7時岡山駅を出発したバスは10月7日早朝に福島県に入った。深夜零時頃震度5の地震に驚いたが、会場到着後すぐにカッパを着て雨の中をブース設営の手伝い開始。今回は11店中福島県が8店の出店だ。F1事務局メンバーで南相馬市在住のTさんが、同じ福島県での開催だからとかなり頑張って出店依頼をされたようだ。

 避難解除となっても帰還しているのは高齢者が多いようで、グルメの列に並ぶ人もテントの中でテーブルを囲む人たちも、高齢者が多くみられた。熊本県からは大蔦屋(おおしまや)さんが販売ブースを出店、みかんの3キロ箱を来場者全員に配布という支援をしていた。

 今回、私は相馬市のブースで「あんこうの唐あげ」担当。店主とその友人が作る「あんこうの唐あげ」はとても美味しい! 「西の河豚、東の鮟鱇」といわれる「あんこう」は福島県いわき市が有名な産地。「あんこうは大好きだ」とか「こどもの頃からよく食べていた」とかの声を多く聞いたので、テントの中に移動販売を試みた。グループで座っていたおじいさんが「この人達皆に配って」と大量に買ってくれ、「まあ、座って喋っていきな」と誘われた。ブース仲間に断って皆さんと暫しお喋りを楽しんだ。食べながらお喋りするって本当に元気になれると思う。この皆さんは地元に帰って来てもなかなか、皆とワイワイお喋りする機会なんてないんだろうなあ~。被災地の皆に元気を取り戻すのは、復興グルメF1大会の目的のひとつだった。ちなみにわがチームの成績は、上位入賞はなかったが売り上げ金額はダントツの1位だった。

 翌日はスタディツアー。役場の方に浪江町の現状をお聴きした。震災時浪江町の人口は21,434人だったが帰還者は約360名、二百数十世帯。うち約70名が町の職員だそうだ。

 帰還が難しい理由は雇用がないこと。浪江町は飲食業が盛んで原発の恩恵を受けていたこともあり、今はほとんどの店がシャッターを下ろしている。まだ農業用水に心配が残り農業の復活も難しい中で、トルコ桔梗やリンドウの栽培出荷に力を入れている。米も全量全袋検査で基準値以下になり、平成27年から販売開始しているそうだ。

 話の後で請戸漁港が見える高台の大平山霊園にバスで移動した。海岸沿いで防波堤工事が進められていたが、その内側には荒涼とした土地が広がっていた。山の中ではないのに猪が住み着いているとも。やはり原発の被害は計り知れない。この何もない土地にも来年から、免除されていた固定資産税がかかるそうだ。

 最後に町役場の方が、誰かがやってくれるだろうとは思わない。自分達でこれからできることをやっていく。決して悲観的ではないと皆さんに伝えてほしい、と言付かった。翌日、ボランティアバスとは別行動で立ち寄った南相馬市小高区が明るく元気な町に見えたのは、お天気のせいだけではなかったと思う。


 (注1)「復興グルメF1事務局」は2013年1月20日、被災地を含む岩手県、宮城県、福島県の仮設商店街の皆さんがご当地食材で「復興グルメ」を考案、販売し、来場者の投票で「復興グルメの№.1」を決定するというイベントを開催、以来継続して主催、運営している。