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社会の根幹としての雇用対策

おかぼん

 私が生まれた1960年に僅か1.3%だったものが、2020年になんと28.3%に。この割合は男性50歳時の未婚者の割合である。因みに女性も男性ほどではないにしても1.9%が17.8%に増加している。もちろん未婚者に死別者、離別者は含まない。これは何が原因なのだろうか。

 なるほど、以前は男性であれば家庭を築いて一人前という風潮があった。その考え方が変わったのも一因であろう。しかし、この割合の急激な増加はそれだけではない何かがあると考えて間違いない。

 私はこの中に結婚したいが結婚できない、それも経済的事情が絡んでいると推察する。30数年前の1990年当時、それでも男性未婚者の割合はまだ5.6%であった。そのときの非正規雇用率は25~34歳が3.2%、35~44歳が3.3%、45~54歳が4.3%、それが、2020年には25~34歳が14.4%、35~44歳が9.0%、45~54歳が8.2%に増えている。特に若年層ほどその比率が高いのが気がかりである。

 未婚者が増えていることは少子化の根本的な原因で、これはこれで問題であるが、もう一つそこに孤独・孤立という大きな問題がある。

 日本は悩みや心配事を同居家族以外に頼れる人の割合が少ない。遠くの親戚より近くの他人とよく言われたものだが、それも昔の話で、近所の人たちとの交流も減りつつある。そのような状況で、これらの未婚者がやがて高齢者になっていった場合、誰が面倒を見るのかという問題が起こってくる。

 現実問題として、以前からゴミ屋敷での孤独死が頻発していたが、このコロナ禍でより深刻化した。なかには、死後数ヶ月経って見つかったというケースさえある。唯一の福祉関係者とのつながりが、コロナ禍で断たれた末の悲惨な結末である。

 今年は多くの企業でベースアップが期待できる状況にあると言われるが、その余力を同時に非正規雇用者の正規雇用化に当てる必要があるのではないか。正規雇用者を絞ることにより得た利益で支払われる税金が、少子化対策や孤独・孤立対策で消えていくというのでは本末転倒である。

 政府にも、賃上げ率と同様に正規雇用率を上げる企業に税優遇するなど、制度的な後押しを期待したい。


◆ おかぼん ライフビジョン学会会員