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悩ましき人口減少時代のインフラ政策

おかぼん

 2023年3月、相鉄新横浜線・東急新横浜線が開通する。西谷駅から新横浜を経由し、日吉駅までの区間に連絡線が新設される。それだけではない。首都圏では2030年代半ばの開通を目指す新空港線(蒲蒲線)やメトロ南北線品川延伸など数々の鉄道新設計画がある。ついこの間も、東京都は東京駅と臨海部を結ぶ地下鉄新路線の事業計画案を発表した。東京を起点に築地、晴海を通るルート(7駅新設)で、2040年までの開業を目指し人口が増える臨海部の交通需要に対応するという。

 一方で、JRのローカル線は危機的な経営状況にある。そもそも、経営が成り立たないローカル線は1987年の国鉄民営化の際に整理されたはずであった。しかし、その後も高速道路の整備に伴ってモータリゼーションはますます進展し、鉄道離れは止まらなかった。それでも、コロナ禍以前はJRに余力があったため、ローカル線の赤字を新幹線や都市圏の黒字で埋め合わせることができた。ところが、コロナ禍で鉄道利用者が急減しそれが困難になった。コロナ禍はいずれ解消するだろうが、ローカル線の沿線人口は減少する一方である。最早これまでということだろう。JR東海を除く各社はついに線区別の平均通過人数を公表するに至った。

 このような状況では、早晩ローカル線の大半は廃止せざるを得ないであろう。ただ一つ考えなければいけないのは、新幹線の開通に伴って利用状況が著しく悪化したかつての主要幹線である。これらも一律の条件で廃止してしまっては、北海道から四国、九州まで一本でつながっている在来線網がズタズタに切り裂かれることになる。ここは国や自治体が手を差し伸べなければ取り返しの付かないことになる。

 ローカル線の問題はあらゆるインフラに共通する問題である。例えば、山奥の集落を考えてもらいたい。以前は林業で栄えた集落も、時代の環境の変化で急速に少子高齢化が進んでいる。人口は今後加速度的に減少するであろう。それでもその集落に人が一人でも住んでいる限りは、道路の保全整備をやめるわけにはいかない。電気や水道・ガス等のインフラ、郵便もまた同じである。赤字だからといって集落から強制的に立ち退かせたり、事業を停止したりするわけにはいかないのである。一企業で無理というなら国や自治体が対応していかざるを得ないのである。

 人口減少時代においてインフラをどう考えるかは重要で難しい課題である。ローカル線の問題はその一つに過ぎない。この問題の解決の中に今後のインフラ全体をどう考えるかの方向性が見えてくるのではないか。またそうあるべきである。当面は政府や自治体の動きから目が離せない。