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ここにもコロナが冷やしたものが

おかぼん

 コロナ禍の行動制限が緩和されたことで、2年半にわたってほぼ中止されていたマラソン大会が徐々に開催され始めた。3月の東京マラソン開催のときなどは、ワクチン接種証明ではダメで、直前のPCR検査が義務づけられるという物々しさがあったが、10月の横浜マラソンでは検温と体調チェックで参加できるまでになってきた。しかし、小規模の大会であっても開催を見送る自治体はいまだに少なくなく、私の住む埼玉県吉川市でもすでに来年4月の開催中止を決定している。

 ところで、コロナ禍における2回、3回連続中止の影響は決して少なくなく、ちょっとした異変が起こっている。それは参加申込者の大幅減少である。私も今シーズンは東京マラソンをはじめとして、横浜、京都、大阪、神戸マラソンに応募したが、東京マラソン以外はすべて当選した。コロナ禍以前は京阪神のマラソン大会は倍率が軒並み4、5倍となるため、こんなに当選することはなかった。神戸マラソンなどは、第1回大会に出場して以来実に11年振りである。それが今年は軒並み2倍を切り辞退者もそれなりに出たため、一部大会では二次募集を行う事態となっている。先着順の奈良マラソンもかつては申込受付後30分くらいで定員となったが、今年は2週間にわたって受付を行ったようである。

 この原因についてはいろいろ考えられる。一番の理由は何と言ってもこの中断によって一時の熱が冷めたということである。数万人規模の大会が全国各地で行われているのにそこにその数倍の参加者が殺到するというのは、いくらランニングブームとはいえ異常であった。次には開催が何度も直前に中止され、参加費が返金されないばかりか遠方からの参加者にとっては旅費や宿泊費のキャンセル料もバカにならないため、大会申込に慎重になっていることである。

 しかしあるアンケートでは、一番の理由に参加費の値上げを挙げている。実は大半の大会で参加費が何割も値上げされている。ある大会の収支決算書を見てみると収入の半分以上が補助金と協賛金である。コロナ対策費や警備費が増える中で、コロナ禍での自治体の財政、企業の業績を考慮すれば参加費を上げざるを得ないというのも理解できなくはない。しかし、同様に参加者にとってみれば、上がらない収入の中で切り詰めるとすれば不要不急のマラソン大会ということになるのである。

 このような現象はマラソン大会に限らず、他のイベント産業も類似の現象が起こっている可能性は高いといえる。消費者物価上昇率は3%を超え更に上昇する気配である。参加費の値上げが参加者の減少を招き、それがまた参加費の値上げに続くということを繰り返すとどうなるのか。このような連鎖を早急に断ち切る経済対策を打たないと、それでなくとも少子高齢化の進む日本に明るい未来はないといっても過言ではないであろう。