月刊ライフビジョン | 社労士の目から

コンビニの店主は労働者?

石山 浩一

 フランチャイズ展開しているコンビニエンスの店主が、労働者として労働組合を結成し、本部に労働条件等の改善を求めて争っている。コンビニの店主が労働者ということには多少違和感があるものの、その実態について考えてみたい。

“店主は労働者に該当しない?”

 原告はセブン‐イレブン・ジャパンの店主たちが結成した「コンビニ加盟店ユニオン(コンビニユニオン)」で、2010年に岡山県労働委員会に本部が団体交渉に応じるよう救済を申し立てた。県労働委員会は本部に団体交渉に応じるように命令を出したが、2019年に中央労働委員会が取り消しを行い、東京地方裁判所も取り消しを追認している。その理由は、店主が店員の採用や商品の購入を自ら行っており、労働組合法が保護する労働者には該当しないとの判断によるものである。これに対しコンビニユニオン側が営業時間は自由に決められず、長時間労働を強いられていることや、本部の判断で追加される新たなサービス等による労働強化があるとしている。また、期限が迫った商品の割引販売への制約や、契約更新が本部の判断によって解約される不安があり、そうしたことを解消するため団体交渉を申し込んでいたのである。

 しかし、今回の東京地裁の判決は労働者性を認めていないため、コンビニユニオンは判決を不服として6月17日に控訴を行っているが、現在審理が行われている。

 広い意味で労働者とは事業所等に使用され賃金を支払われるものであるが、雇用関係についての規定はない。従って、コンビニの店主も雇用関係はないが、本部に使用される労働者として労働組合の結成は可能といえる。

“コンビニ店主のストライキは可能か”

 コンビニユニオンが団結して団体交渉を行い、主張を実現するための団体行動権の行使を行った場合はどうだろうか。

 いわゆるストライキは、ノーワーク・ノーペイの原則により使用者からの賃金は当然支払われない。本部とは雇用関係になく、事業主は本部から賃金は支払われてはいない。本部との契約にもよるが、ストライキを行っても本部の損失はなく自分たちの収入がなくなることが考えられる。ストライキは自分たちの収入減を覚悟する同時に、本部に対しても相応のマイナスを与えなければ効果はない。

今回の本部との団体交渉ではストライキの可否は報じられていないが、話し合いによる解決を選んだと考えるべきだろう。

“店の明け渡し等の判決”

 東大阪市のコンビニが独断で24時間営業を止めたため、本部と紛争状態となった。本部は2020年1月に店主に対して契約を解除し、店舗及び土地の引き渡し、加盟店解除の約定損害賠償額求めている。これに対し店主は店にとどまって営業を続けている。店主は、加盟店解除の無効と、加盟店契約上の当事者としての地位の確認、取引拒絶による損害の請求を求めているが、この裁判は現在審理中である。

 コンビニは経営者として営業している店と店主として経営を委託されている場合があり、一律に労働者性を判断することはできないが、実態に基づいた判断が求められている。

以上 


◆ 石山浩一
特定社会保険労務士。ライフビジョン学会顧問。20年間に及ぶ労働組合専従の経験を生かし、経営者と従業員の橋渡しを目指す。   http://wwwc.dcns.ne.jp/~stone3/