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副業解禁は本当に進むのか

おかぼん

 厚生労働省が2018年にモデル就業規則を改定し、原則禁止だった副業を推奨する方向にカジを切ったものの、大企業などは依然として副業禁止の比率が高いため、企業に対して従業員に副業を認める条件等の公表を求め、副業を制限する場合はその理由を含めて開示するよう促すという。

 政府は副業の普及により成長分野への人材移動につなげたい考えだが、旧態依然たる企業にとってみれば、優秀人材の流出に繋がりかねない。副業容認の企業がなかなか思うように増えない理由はここにあると言ってもよいであろう。

 現在の指針では➀労働者の安全②業務秘密の保持③業務上の競合回避④就労先の名誉や信用の4点のいずれかを妨げる場合、企業は副業を禁止または制限できると定めているが、優秀人材の流出を懸念する企業ならば、とてもそれでは納得できないであろう。

 欧米では多様な働き方の手段として副業が広がり、ドイツや英国では競合企業での勤務などを除き副業の制限が認められず、米国でも副業への法的規制はなく原則自由である。結果として、米国では労働市場の流動性は極めて高い。

 ところで、日本では東亜ペイント事件と日立製作所武蔵工場事件判決により、企業は労働者に対して原則自由に配転と残業を命じることができることになっている。このような中で果たして副業が普及するのか大いに疑問である。

 例えば、所定休日を利用して副業をする場合など、労働時間はその副業時間を含めて残業時間の上限規制の対象になるため、企業の残業命令に法的制限が加えられることになる。また、配転の自由も副業を認めた場合は、道義上何らかの制限が加えられかねない。

 そのような中では、男性の育児休業取得と同様に、法的には副業が認められるとしても、昇進に影響するのではないかという疑念等は拭い去れない。副業が広く受け入れられるためには、結局は企業の意識改革に委ねられる面が大きいと言える。

 副業解禁の実効性を上げるために、制度的な面だけでなく、意識改革が進むような施策も是非合わせて行ってもらいたいものである。