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参院選の争点は用意できたか?

司 高志

 我が国では長く暗い道のりが続き、明るい夜明けの兆しが見えてこない。そんな中で今年は参院選の年である。

 昨年の衆院選では、維新が善戦し、立民の代表が代わった。私は、代表が代わったことによる効果を期待している。

 以前の立民は、選挙前になっても一向に選挙の争点出しが行われなかった。早くに争点を出すと、争点つぶしが行われるので、戦略的に争点を出さないでおくということがあったのかもしれないが、選挙の前になって争点が出されてみると、「えっ! エッツ!? エーーー!! それが争点なの?」という場合が多かった。戦略的に争点を出さなかったのではなくて、出せなかったのかー、といつも残念に思っていた。

 さて、私の見るところ、今回の岸田首相は争点つぶしの名人のようだ。相手が争点を出してくるとサッと、それを無効化するように制度を変更してみせたり、似たような論点を出したりと、相手の手を潰すのがうまい。とはいえ早期に争点を出して戦う姿勢を見せておかないと、やっぱり争点を出す能力がなかったのかと思われてしまう。それは避けたいところだ。

 私の考える争点を3つほど挙げておこう。

 まず一つ目は、とにかく経済だ。前の代表は、ここのところがうまく争点化できなかった。今の日本が真っ暗闇なのは、勤め人の給料の平均値を下げる算段しかしていないことだ。正社員の枠の数を減らし、派遣やバイトで賄えるビジネスモデルを作ったものが勝つ。さらには、職能給で正規社員と非正規社員は同一賃金だ、として正社員の各種手当を撤廃し、給料を低い方に標準化しようとする。そのうち非正規社員には退職金がないのだから、正規社員の退職金もなしだ、というところが増えても不思議ではない。

 このようにして給料を下げるから結婚しない、できない人が増えていき、少子化が進む。企業は若くて低賃金で、無理がきく男子社員が大好きだ。だけど見つからないからヨシッ、低賃金で何とかなりそうなのは外国人労働者だとなり、外国人労働者に頼ろうとする。そうすると今後はどうなるかというと、ヨシッ、日本の労働者も給料は外国人労働者と同一賃金だ、となるだろう。そして最初に戻り、少子化がさらに加速する。

 この悪循環を何とかするには、自民党に任せるだけではだめで、各政党の切磋琢磨が必要だ。立民にはぜひきっかけとなる争点を出してもらいたい。

 次は皇室問題だ。安定的な皇位継承だけではなく、どこまで一般人と異なることができるのかという範囲や皇室の使う予算額が妥当かまで踏み込んだ論点出しが必要になってくると思われる。海外移住した関係者に各省庁が便宜を図っているのかいないのかわからないし、どれだけ税金が使われているのかも不明である。

 皇族の方々が通うことになる学校も、一般入試で入ることになるのか特別な推薦枠なのか不明であるがこの点には触れず、「971庁」からは「騒ぐでない」というお達しがあった。このあたりを正常化するには、国会での議論しかないと思うので、皇室問題全般に関して争点出しを頑張ってほしい。

 最後がコロナの対策で、一時期はずいぶんと減ってこのまま終息するかに見えたが、どっこいそうはいかなかった。減っている間に、二の手、三の手を考えておけばよかったが、結局は何もしなかった。そういう点では、結局のところ、総理が代わっても自民党自体は何も変わってはいなかったということだろう。

 コロナウイルスも生きているのだから、次々に突然変異で異なった性質の株が生まれたりするが、人間の対策も新種の株の性格に合わせられるように、臨機応変でありたい。コロナウイルスに柔軟に対応できるような提案をぜひお願いしたい。

 先にも述べた通り現首相は論点つぶしの名人であるから、野党は選挙前まで、つぶされたら次を出しまた次を出すという方策を続けなければならないだろう。参院選まで万全の態勢で臨んでほしい。