月刊ライフビジョン | off Duty

コロナ下の日常記録を後進のために

曽野緋暮子

 先月は何となくコロナ収束ムードで2年ぶりの里帰り、家族旅行等々で世の中がちょっと明るい感じになっていた。もちろん、年末年始の大移動が起きるとコロナが感染拡大するのではとの懸念も多かった。我が家は田舎ならではの風評被害に遭うのが嫌で、子供たちの帰省もなし。私達が子や孫に会いに行くこともせず訪れる人もない、高齢者だけの何もないお正月を過ごした。友人達からは「子ども達が帰省しました」「結婚式ができず入籍しただけだった子供夫婦が帰って来て、おばあちゃんが大喜びしています」なんて写真付きLINEが次々と送られて来た。

 一昨年、昨年と2年続けて山小屋を予約しながらキャンセルした登山計画を、今年は実現できそうってワクワクしていたこのお正月。2年続けてできなかった忘年会の代わりに新年会をしましょうと連絡を取り合ったお正月…、なのにワクワクは一瞬で終わった。あっと言う間に感染拡大だ。新年会の中止連絡をしている間にも感染が拡大している。ウイルスの種が異なっているとかで、昨年までとは比べものにならない勢いで感染者数が上昇する。登山計画も早々に「今年いっぱいは無理だろう」と判断して、山小屋の予約さえしないことになった。

 先日、先輩T子からの受電。昨日、登校したばかりの高校2年生の孫から、コロナ陽性者が出た、学年閉鎖するのですぐ帰宅するよう指示が出た、迎えに来てとの連絡が来た。学校に迎えに行ってみるとリモートで授業を受けている子も多いらしく、登校している子は半分位だったという。

 孫は「濃厚接触者」になるから来週月曜日に検査するまで自宅待機を要請され、さらに、濃厚接触者の濃厚接触者となる家族全員が、検査結果がわかるまで自宅待機しなくてはならない。父親はリモートで在宅勤務ができるが、娘は会社を休まなければならなくなった。

 娘一家とはお隣さん同士だからT子夫婦は濃厚接触者にはならないらしいけど、娘一家には買い物等のヘルプが必要だ。「今の今までニュースの話だと思っていたことが現実になって、本当にビックリ。」「さらにビックリするのは、こんな状況でもゴルフ場とパチンコ屋は閉めていないからと、夫はゴルフに行ったのよ。どう思う!」

 身近な話として聞くと子どもの感染は本当に怖いし、大変だ。T子のようにすぐに動ける頼もしい祖父母や近親者が近くにいない家庭は本当に困るだろう。

 そんな中で私は三回目のワクチンを接種した。今回の接種券は一気に配布されるのではなく、前回の接種時期に合わせて順次配布されるようだ。接種券が届く前に近所の個人医院に問い合わせると「接種券が届いたら予約してください。」とあっさり言われた。接種券が届くと同時に予約した。当日、問診、接種、15分の待機で終了。今回は前回のような発熱の副反応はなかったが2日ほど、腕を上にあげられない位の痛みが続いた。

 こうして三回目のワクチンはスムーズに受けられたが、昨年二回目接種後のような高揚感はない。二回目接種した時は「これで、感染する確率がぐんと下がったから動き回れる。」と、何となくうれしかった。でも今回はその期待が全く湧かない。自分自身の重症化を気にする位だ。ワクチン接種を受けたくても受けられない人からすると「何言ってんだ。」と怒られそうだが、今も続く日々の感染者数拡大が心に重い影を差しているのだろう。

 このささやかな記録が、後進の役に立つことのない世界の到来を祈りたい。