月刊ライフビジョン | off Duty

SFの主人公になってしまった私たち

曽野緋暮子

 9月1日に美容院を予約していた。しかし、8月末に地元で桁違いの感染者激増。おまけに予約している美容院のすぐ近くでクラスター発生。白髪が目立ち髪がボサボサになったとしても、買い物以外に出かける訳ではないので構わないと思い、急遽キャンセルした。 

 同じ頃、隣の学区の小学校が休校になった。4年生に感染者が出て教職員と4年生全員がPCR検査を受けるために学年閉鎖の方針だったが、他学年の約200名が自主欠席すると言い、休校になったそうだ。その後、放課後児童クラブでも次々と感染者が出て児童クラブも休みとなった。小学生はまだワクチン接種の対象になっていないので心配したが、児童の感染者はほとんど無症状の自宅待機だったようだ。他の学区や中学校に拡がることなく、何とか1週間の休校で収まったようで安心した。

 友人T子は、通っているスポーツジムのインストラクターがコロナ感染したことで、スポーツジムが休みになったそうだ。ジムの従業員は全員PCR検査を受けたようだが、T子は濃厚接触者にならないので検査を受けるように言われなかったそうだ。でも心配なので、自主的に無料のPCR検査を受け陰性だったのでホッとしたと電話があった。確かにワクチンを接種したと思われる年齢の感染者報告が連日数名あり、心配になるのも無理はない。

 前述の小学校に、孫が通っているM子の話。

 子ども達全員にタブレットが支給された。ひらがなもちゃんと覚えていない1年生はひらがなをきちんと書く前にキーボードでひらがなを探す。足し算、引き算も何となくできることがあるとか。先生に質問があればチャットに書き込んでも良いと言われたそうだ。そんなこと言われてもひらがなも作文も教わらないでどうするの? 何となく書いちゃえるのかな(笑)

 新聞の意見欄にあった話。【文科省の一人一台端末環境のプロモーション動画の中で、小学校の女子児童が「タブレットがないと自分の頭で全部考えないといけない。タブレットがあると、問題を間違ったりすると説明があってどんどん進められる。」と言っていた。文科省は子ども達に自分でじっくり考えさせるより、カリキュラムを進める方に重きを置いているのか。間違っても自分で考えさせ、自分で苦労して習得する方が大事だろう。】

 私達もパソコンを使うようになって、漢字は読めるけれど書けなくなった。スマホに慣れると辞書をひかない、本で調べないで何でも検索してすます。メールやLINEは打つけれど手紙やはがきを書かなくなった。今はタブレット、スマホを使いこなせないと最初の一歩に躓く時代になったのかなあ。そうなると自宅にWi-Fi環境がなかったり、トラブル対処ができる保護者がいなければ何も始まらない。

 M子は孫にタブレットが動かないと言われて調べると、学校コード、ID、パスワードが必要だった。しかし1年生の孫にそれらは理解できていないのでお手上げだった、と。子育ても大変な世の中になったものだ。

 先日読んだばかりの小説、本谷有希子著「あなたにおススメの」に出てくる世界は近づいているのかと思わされた。曰く、

――子ども達を「等質」に教育する人気保育園に娘を通わせる主人公は、体に超小型電子機器をいくつも埋め込み複数のコンテンツを同時に貪ることに至福を感じている。子ども達も同様に体に超小型電子機器をいくつも埋め込み、自分自身が「AI」になることを夢見ている。そんな中で、オフライン志向に拘るママ友が悩む姿が描かれている。ラストは保育園のイベントで、子ども達全員が同じに見えて自分の子どもがわからない!――