月刊ライフビジョン | 地域を生きる

遊びのあれこれ参加型展覧会

薗田碩哉

 筆者の地域活動の根拠地の一つに「NPO町田市レクリエーション連盟」という組織がある。市内の遊びやレクリエーションに関わる団体が結集して‘活力ある町田を作る’ことを目標に多彩に活動しているが、そのメイン事業が「子どもも大人も遊びもまちだ展」という長い名前のイベント開催だ。夏休みの入り口にあたる海の日前後の日曜日、市の中央部にある青少年施設「ひなた村」の全施設を使い、連盟の加盟団体や友好団体が結集して、多彩な遊びの展覧会を繰り広げる。展覧会と言っても見ているだけではない、子どもも大人もそれぞれに新しい体験に挑む参加型イベントだ。毎年、周辺の団地をはじめ、かなり遠いところからもバスに乗って子どもや親子連れや高年者が1000人近くもやってくる。

 ひなた村はこんもり茂った森に覆われた高台で、バス道路から曲がりくねった坂道を登っていくと、てっぺん広場と名付けた大きな広場に出る。その傍らにはとんがり屋根の本館とそれに付随したホールが建っている。森の中や別の広場、さらには裏手にある急な崖まで、あらゆる場所を生かして「遊びのお店」が開店する。戸外では紙鉄砲やお手玉や輪投げ、弓矢、吹矢のような昔ながらの遊び、太極拳やエイサー踊り、珍しい用具を使ったニュースポーツ、崖を滑り降りる冒険遊びなど。室内では紙工作や自然物を使ったクラフト、科学遊びやおもちゃの病院、人形劇や紙芝居、ピアノ演奏、手品などなど。森の中では語り部がお話を聞かせ、誰もが八丈太鼓に挑戦できるコーナーもある。  

 ユニークなのは食べ物・飲み物。お腹がすいたら焼きそばや炊き込みご飯やじゃがバタ、綿菓子やかき氷のお店もあるが、これらはみんなお金を出しても食べられない。いろいろなコーナーで参加体験をするともらえるシールを何枚か集めると、食べ物チケットと交換できるというルールなのだ。時々、腹をすかせた大人が財布を出して焼きそばを要求したりするが、すべて丁重にお断り。大人も子どもも例外なく、遊びを体験してはじめて食べ物にありつける。1ヵ所でもらえるシールは1枚だけだから、何か所か回って体験を重ねないと美味しい食事にはありつけない。

 今年で16回目になる「遊びのまちだ展」は、7月16日の日曜日に天気にも恵まれて無事に終わった。年々、出展者の輪が市内だけでなく都心や横浜や相模原にも広がって、新たな遊びのプログラムが加わり、それに対応して参加者も老若男女、幼児から高齢者まで幅が広くなってきている。イベントを支える助成金は「子どもゆめ基金」。これは文科省系の助成団体で、子どもの体験活動の深化と拡大を目指す活動には幅広く援助をしてくれる。わが町レクもこの資金をフル活用して遊び人と遊び集団の育成に努めている。

 人と人との絆がなんとも希薄になってきた昨今の社会にあって、人を結び合わせる力を持っているのは何と言っても遊びである。それもスマホのゲームでなくて身体と心の全体を動員する伝承遊びや表現遊び、つくる遊びの持つ「関係力」に注目したい。夢中で遊んでいるとき、人はみなそれぞれの違いを越えて輝いて見える。シラーが言ったように「遊んでいる時、人は全き人である」。


【街のイベント帖 29】

遊びのまちだ展

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薗田碩哉(そのだ せきや)
 1943年みなと横浜生まれ。日本レクリエーション協会で30年活動した後、女子短大で16年、余暇と遊びを教えていた。東京都町田市の里山で自然型幼児園を30年経営、現在は地域のNPOで遊びのまちづくりを推進中。http://www.sansanclub.jp/ NPOさんさんくらぶ 理事長