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2021都議選異変!からの考察

司 高志

 先月号で、選挙で与党が有利になる選挙術について3点ほど定石を書かせていただいた。

 要は、政治に失望して、あるいは政治に興味を失って選挙に行かないでくれれば、岩盤支持層や組織票がある与党に圧倒的に有利になり、勝ち続けられるとの戦法だ。菅総理は知ってか知らずか、有権者が、全くやる気がなくなるしゃべりを披露してくれる。たとえば、オリンピックについて、ブッ壊れたレコードのごとく、安心安全を針が飛んだように繰り返すのみだ。安心安全の中身はないので聞いているほうはいい加減にしてくれと思う。でもこれは、政治に興味をなくすという術中にまんまとはまっているわけだ。で、6月4日の日曜日に行われた都議選では、まさしくこの戦法は大当たりで、史上2番目に悪い投票率、42.39%を叩き出した。

 こなると信者のような自民岩盤支持層に支えられて、自民圧勝となるはずだったが、意外と勝ちが少なかった。比較するに公明党は辛くも組織票をバックにして全員当選を果たした。

 なぜ自民は低投票率を生かしきることができず、公明は組織票が生きたのか?

 公明党のほうはなんとか説明は可能ではないかと思う。普通に考えれば、コロナでいつもの動きができないはずだが、なりふり構わず人流を作り、都内で活動したのだろう。電話、インターネットを活用したとも考えられるが、組織の指示には自己責任でもって、従ったのではないだろうか?

 投票に行かない層はめんどくさいのか、自分の投票によって政治が変わると思わないのか、政治なんてどうでもよいのか、理由はなんであれとにかく投票に行かない。この層はどうつついても効果は薄そうで、今回も投票に行かなかったと思われる。

 だがこれでは、自民党の優位は揺るがない。だが大勝ちもできなかった。その理由を考察するに、一番無難な政党である自民党に入れていた人が、投票に行かなかったからではないのか? もしくは、岩盤層の信者の中でも、さすがにここまでひどい自民党に嫌気がさしたのではあるまいか? とにかく、自民支持層が何らかの理由で投票行動を起こさなかったのではないか。これが、今回の都議選の異変である。この異変が次の衆院選にどう影響するか。

 ここで心配なのが、野党の思考である。この動きを大きく読み間違えて、自分たちには実力があると勘違いしてないか、ということだ。

 とにかく野党は反省しない。国政では、どうして支持率が数パーセントしかないのか、理由は考えないのか? 原因を正しく理解しないと、そのあとの対策が考えられない。今からでも遅くない。きちんと経済政策を考えるべきだ。

 そこで筆者は、野党第一党の入れ替え戦を推奨する。次の衆院選では入れ替え戦をしている場合ではないという考えもあるかもしれないが、ずっと第一党の入れ替え戦を行わなかったせいで、現状のように弱い野党になってしまった。ともあれ、次の衆院選ではとにかく投票に行ってほしい。入れ替え戦でも批判票でも何でもよい。とにかく投票に行かないことには何も変わらない。これだけは強くお願いしたい。

 このように投票率が低くなってしまうのは、その重要性を教える場所がないからだ。学校では、試験に出ることしか教えなくなった。しかし試験には出なくても、次の3つは何とか教えてほしいと思う。

 ひとつは、投票の重要性。

 民主主義の特性上、法律を作るという行為や行政を監視するという機能は、国会でしかできなかったり、国会で行うのが有効性が高い場合が多い。投票に行かないことは、なんでもありの白紙委任をするのと同じだ。法律が決まってしまえば、従うしかない。こういうところをよく考えないと、生活はますます苦しくなる。

 次は、労働基準法だ。

 とにかくこの法律をよく学ぶことが、企業内での生き残りの確率を上げることになる。学校でこの法律の存在と使い方を教えておくことが、明日を生き抜くことにつながる。存在だけでも教えてほしい。

 最後がお金の話だ。

 お金の使い方が人生を決める。これに絡めて、経済の話、税金の話なども教えてほしい。今の消費税では、買い物に対して懲罰をかけているのと同じだ。生活必需品まで税金をかけて徴税される。一方では富裕層や会社に甘い税制を作り、国民一人当たり、〇〇円の借金がありますと、「罪」務省の喧伝に乗り、何やかやと税金を取られる。自民党なら一気に経済が悪くなることはしないが、徐々に蝕まれていく。給料は増えないが、税金や社会保険料は徐々に上がり、年金は減っていくのだ。

 以上の3つは、どこかで学習しないといけないと思うが、その機会は極めて少ない。何とかならないものかと思う。最後に投票に行かない人に、鬼滅の刃からひとこと。

 「白紙委任はやめよう。」「生殺与奪の権を他人に握らせるな!」(富岡義勇)