月刊ライフビジョン | 社労士の目から

感染予防の休業は無給?それとも有給?

石山浩一

 新型コロナウイルス(コロナ)感染者が急増している。特に都心部での感染者数が多く、1月28日の感染者数は東京都1064人、神奈川県433人、千葉県314人、埼玉県292人と1都3県で2103人と、全国の約50%を占めている。このため政府は感染予防のため緊急事態宣言を発表、不要不急の自粛を呼び掛けている。

 宣言では1/8から2/7までの31日間について埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、1/14から2/7日までの25日間について栃木県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県が対象となっている。

“緊急事態宣言の取組”

 緊急事態宣言が発表された都道府県では、不要不急の外出や移動の自粛、不特定多数が集まるイベントについての人数制限や収容率、飲食の制限等が求められている。また感染リスクの高い飲食店やカラオケボックスなどの営業時間を20時までとする短縮要請などもある。政府は対象都道府県が行った要請に応じた飲食店等には1か月180万円の協力金を支払うという。

 さらに企業等に対しては自粛要請の対象ではないが感染予防の実効性を高める環境つくりとして、人との接触期間減少のための「出勤者数の7割削減」や「テレワークの拡充」などの協力要請も行っている。同時に20時以降の外出自粛のため、20時以降勤務を最小限とするよう理解を求めている。

“感染症法による就業制限”

 感染症については平成11年4月に改正された「感染症の予防及び感染症患者に対する医療に関する法律」(感染症法)によって定められている。この法律は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関し必要な措置を定めることにより、感染症の発生を予防し、そのまん延の防止を図ることにより、公衆衛生の向上及び増進を目的としている。感染症法では法律等で1類から5類までと、指定感染症が区分されている。その区分に応じて入院や就業制限など国や都道府県等が行う措置が定められている。1類はエボラ出血熱やペストなどで最も制限が厳しく、コロナは1~5類には指定されていない。

 但し、コロナは指定感染症に分類されていて、制限措置は1年以内の期間に限り、政令で定めて1~3類感染症に準じた措置等を実施するとなっている。特に1類の制限措置としては医師の届け出義務、就業制限、医療保険公費負担、建物などの消毒等の対物措置などがある。今回のコロナが1類~2類に基づく制限措置となっている。

“事業主による就業制限”

 指定感染症に指定されているコロナにより休業した場合の扱いはどうなるのか。

 労働基準法では「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当てを支払わなければならない。」となっている。従って、緊急事態宣言が発せられている都道府県以外の使用者が独自の判断で休業させた場合は、基準法に基づいて休業補償を支払わなければならない可能性がある。

 但し、令和2年10月1日から令和3年1月29日3月28日にコロナの影響で休業させた場合、休業支援金・給付金が支給される。給付金が原資の雇用調整助成金の助成率は大企業が解雇等のない場合は、中小企業同様100%支給で最大15000円となっている。

 日々変化するコロナ感染者数であるが、雇用調整助成金によって雇用が継続する間に、収束することを期待するばかりである。


石山浩一 特定社会保険労務士。ライフビジョン学会代表。20年間に及ぶ労働組合専従の経験を生かし、経営者と従業員の橋渡しを目指す。   http://wwwc.dcns.ne.jp/~stone3/