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菅内閣にこそ 緊急事態宣言を

おかぼん

 私が先々月、先月と指摘してきた緊急事態宣言を、知事たちに半ば強迫されるかたちで、漸く菅首相は重い腰を上げ発令した。遅きに失した感があるが「やらないよりはまし」であろう。それにしてもこの危機感のなさは呆れるほかない。内容も昨年4月とは異なり、中身より精神論ありきである。

 ようやく月末を迎え、新規感染者数で言えば、東京都は何とか3桁に抑えることができてきたようであるが、医療は事実上崩壊しており、自宅療養中(正しくは自宅待機中)に病状が急変し死亡する例が後を絶たない。遺族にとってはやりきれないであろう。しかし、菅首相はそのような痛みなど全く分からないのか、平然と最後のセーフティネットに生活保護があると言って憚らないのであるから、あまりの鈍感さに開いた口が塞がらない。

 最近の記事に、「社長が口にしたら3日で会社が潰れる3つの『菅首相語録』」というのがあったので紹介したい。その3つとは、1.「仮定のことについては、私からは答えは差し控えさせていただきたい」、2.「引き続き緊張感を持って、事態を注視していきたい」、3.「一日も早く収束させ、安心して暮らせる日常を取り戻すために全力を尽くします」である。

 部下が「社長、このままでは半年後に売り上げが半分になることが予想されます。いかがいたしましょう?」と相談してきたときに、「仮定のことについては、私からは答えは差し控えさせていただきたい。」と答えたらこの会社はその後どうなるだろうか。

 また、工場で製造ラインにトラブルが発生し、早くどうにかしないと生産がストップしてしまう状況のとき、のそっと様子を見に来た社長が、「引き続き緊張感を持って、事態を注視していきたい。」と言ったら、現場監督者はどう感じるだろうか。

 最後に、セクハラやパワハラ、モラハラやイジメなどの被害を訴える部下や事態の深刻さを報告する部下に対して、「一日も早く収束させ、安心して暮らせる日常を取り戻すために全力を尽くします」と他人事のように言われて当事者は納得できるだろうか。

 これを見た私は吉本新喜劇のギャグか、と思ってしまった。しかし、これはお笑いの世界の話ではなく、今の日本のトップの言動なのである。笑って済ませられる話ではない。

 まあ、言葉はともかく、実行するトップであればまだ許されるのであるが、何とか緊急事態宣言は出したとは言え、冷水で顔は洗わなかったと見える。

 先日、第3次補正予算案が可決されたが、野党の強い反対にも拘わらず、Go To予算は頑なに拒んで修正しなかった。この予算案は今年度の補正予算案である。緊急事態宣言解除の延長が現実味を帯びてきている中、これを頑なに拒む理由が分からない。繰り返すがこれは今年度、即ち3月31日までの補正予算案である。緊急事態宣言が解除されたら、即日、直ちにGo Toを復活させるというのだろうか。

 未だに、菅首相は夢うつつのようである。困ったものである。