月刊ライフビジョン | off Duty

コロナも天災も高齢化も

曽野緋暮子

 毎年、りんごを宮城県山元町のりんご園から取り寄せていた。昨年は酷暑で思うようなできではないので贈答用りんごは勘弁してほしい、りんご園として美味しいりんごが届けられないのは残念だし、曽野さんにも迷惑がかかるのでと言われた。いつもの「お取り寄せ仲間」達は残念がったが、翌年に期待をつないだ。ところがその今年も、昨年以上の酷暑と数度の台風で思うような出来ではなかった。そして、閉園のお知らせが届いた。転勤族の息子に事業の後継は無理、80歳が近づいたところでと苦渋の決断をされたようだ。

 リンゴ園との縁は2011年10月、趣味の歩き仲間数人で東日本大震災のボランティアとして宮城県山元町に行ったことから始まった。東北でりんごと言えば青森県と思っていたが、山元町はりんごやイチゴの産地として有名な所だと初めて知った。(りんご園は大きな被害を免れた一方、後にボランティアに入った海沿いのイチゴハウスの被害は尋常ではなかった。)

 仲間と、できるだけの支援はしたいねと話し合った。現金ではなく仕事を維持できる支援が良いとの結論に達して、翌年からりんごの一括購入をすることにした。元の会社の仲間、趣味の仲間等々に協力してもらい、約60箱の注文が取れた。

 できるだけ被災地の方に手間をかけないようにと注文、支払いの窓口を私一人とした。送料分は高くなるが、目に見える支援だからと皆さん快く協力してくれた。りんご園主が研究熱心で、たっぷりと蜜が入った獲れたて産直の美味しいりんごであることがリピートに繋がった。毎年11月、12月は注文取り、注文依頼、配達、集金、支払いとバタバタしたが、美味しいりんごが届くことが、皆に届けられることがうれしかった。

 来年は東日本大震災から10年、りんご園の方達もよく頑張られたと思う。今年は昨年以上に出荷したくない、出来の悪いりんごだと言われたが、最後のりんごを味わいたくて自宅用を送って貰った。確かにいつもより小振りで蜜が入っていない。でも、しっかりとした果肉には、山元町の味がした。9年間ご馳走様でした!!!

 先日、何年か振りで蜜柑を買った。ここ数年は蜜柑、レモン、八朔を買ったことがない。歩き仲間のひとりが親戚の柑橘類の畑を任されるようになり、出荷に相応しくない蜜柑、レモン、八朔を、それぞれの季節に我が家で消化する以上の量を届けてくれていた。おまけに12月初旬には、収穫できなかった蜜柑を残したままにすると木が傷むから、皆で蜜柑狩りに来てほしいと依頼があり、大勢で押しかけていた。蜜柑が植えてある斜面は足元が危ないけれど、それなりの準備をして楽しませて貰った。みんなザックに背負えるだけの蜜柑を背負って帰った。

 しかしこちらの畑も昨年、今年と続く酷暑と度重なる台風で味も収穫量も落ちたのでと、畑の持ち主が柑橘栽培から手を引くことに。後を託された仲間もそれなりの年頃なので、今から引き継ぐことには躊躇したようだ。先日会った時、「我が家も蜜柑を買っている」と笑っていた。2020年はコロナで始まりコロナで終わったが、自然災害の脅威、高齢化問題も忘れられない1年であった。