月刊ライフビジョン | off Duty

「Go to」のターゲットは誰?

曽野緋暮子

 今夏の酷暑は長く続いた感がある。やっと秋が来たと思ったらいきなり、朝夕はフリースが要るような寒さで、慌てて服と靴の季節を入れ替えだ。今年は偶に行くランチや懇親会のための服に一度も袖を通すことなかった。新幹線等冷房移動時の必需品である夏用のジャケットもカーディガンも、着ないまましまい込んだ。ちょっとヒールのついたサンダルも一度も履かなかったなぁ。

 昨年のバーゲンで今年の秋冬用に購入したお出かけ着を出しながら、着る機会があるのかなぁと独り言しつつ、コロナが収束したとしても、大人数での会食はNGだろうなぁ、皆で鍋をつつくなんてもっとNGだろう。そうなるとお出かけ着、お出かけシューズは要らないなぁ。

 半年前にはほとんど見なかったデパートやブティックの新聞広告が連日入ってくる。シーズン落ちではないバーゲンセールに行ってみたいけれど、デパートの中を回ることにも二の足を踏む。せっかく購入してもお出かけが予測できないことで一層、躊躇する。

 地元のスーパーで約1年ぶりに歩き仲間とバッタリ。彼女は居住区が異なる。「このスーパーで会うことってないですよね。」と声をかけると、Gotoイート共通券を買いに来たという。1万円で2500円分のチケットが付いている地域限定の食事券だ。「買った?」

 私はまだまだランチに行く気がしないし、「早くても来年までは誰も来ないと思うので、使わないものは買わない。」と返した。すると彼女は「来年3月まで使えるのよ。誰かとランチするにはお得だから。」と話が戻る。そうそう、2500円がお得だから気軽にお店で、と言う人も増えたようだ。

 確かに私のように街に出ない、日用品しか買い物しない、旅行にも行かないのは経済活性化に悖る人間なのだろう。彼女のような人達が増えれば、経済も回るだろう。Gotoイートを考えた人も喜ぶだろう。

 でもこれは、経済政策としてまともなのだろうか? 使う予定のない食事券に1万円払うことができる、余裕のある人のための政策に思える。話題のGotoトラベルも然り。普段は手の届かない高級ホテルが35%offで宿泊できて、おまけに地域共通券というお小遣いまで貰える。トータルで半額近く安くなるとしても、目の前で出て行くお金はそれなりだ。お得が大きければ出費も大きい。人気の高級ホテル等は来年3月まで満室だとか。

 経済格差が広がっていくようで悶々とする。こんなのって本当に世の中のためになっているのかなあと近所の若者に愚痴ると彼は、「お金を貯めこんでいる年寄りに、高級ホテルや高級食材を提示して預金を吐き出させるには良い方法だと思いますよ。」と事も無げに言った。

 なるほど!!!