首相のお友達優遇内閣はもう限界にきている。特に加計学園問題では状況証拠が真っ黒で、しかし首相と官房長官はまだ、漂白剤の投入に執心している。
そう判断する理由の一つは首相、官房長官の否定の仕方が半端ではないことにある。加計問題はアベトモ、おっと、森友問題とは比べようもないほど、文部科学前事務次官への反撃がすさまじい。やましくないなら鷹揚に構えていられるものを、なりふり構わぬ個人攻撃、Ｙ新聞を使っての出会い系バー報道や、御用メディアの提灯記事、大学教授や元公務員を引っ張り出しての批判記事など、総動員で潰しにかかっている。文科省の内部調査結果に重ねて各省庁の天下り調査を同時に発表し、文科省以外は組織的天下り活動はシロだったなどと、涙ぐましいばかりの“印象操作”である。（だからといって筆者は文科省の天下りを容認するものではない。）
そもそも加計問題の本質は、獣医師の学部新設ができないという岩盤規制にドリルで穴をあけたものの、この穴から入れるのは首相のお友達だけ、という抜け道を作ったことである。それがバレると御用メディアを使い、規制権限に穴を開けられた文科省の腹いせとか、天下りの摘発を根に持った仕返しとか、下衆の勘繰りオンパレードである。
お友達を優遇した証拠としては、獣医学部のない地域限定で一校だけ認可というという、それもお友達の一校に絞る修正を内閣府が行っていた文書が文科省の調査で出ていることである。もちろん加計に絞るためにという記載はないのだから決定的な物証にはならないが、意図は明白である。さらに官房副長官の発言メモのリーク追加もあり、首相の関与が間接的ながら明らかになった。この文書が追加で出てきたのは、官邸側に不利にならないように文科省内部のどこかで公表する文書の検閲が行われている可能性が高い。
官邸、内閣府側は特区の審議会の議事録を公開しても良いなどと言っているが、このような工作が議事録に載るべくもないし、このような裏工作をした上でいくら審議しても、問題が明るみに出るはずがない。この裏工作によって獣医学部の新設を希望していたＫＳ大学は 条件を満たせなくなり申請できなくなったのであるから、審議自体には表面上は何ら問題がないという状況が作り上げられる。決定的な物証はないがこれほどの状況証拠を前にして、漂白剤を使えば使うほど怪しさが際立つ。
判断理由の第二は、前次官はこのような行動をしても何も得をしないばかりか、世間の批判にさらされ心理的にも圧迫されていることである。“失うものが何もないので死に物狂いで告発している”という評は間違っている。出会い系バー通いが家族にわかってしまったり、家に帰れなくなったりと、失うものはあまりにも大きい。
今回のことは正義のためというよりも、怒り、腹に据えかねるというのが一番近いように思う。この戦いはよくて官邸、内閣府関係者と差し違えくらいで、アベ本丸へは届かない。録音でも出てこない限り首相には、「私は何も知らないが、周りで勝手にやったこと」という切り札がある。下手をすれば出会い系バーのあたりであっさり返り討ちに遭うことも考えられた。微罪でもあれば逮捕されるだろう。自分には全く得がなく、血を流すことを覚悟で出てきているのだから、筆者は真実である可能性が高いとみている。
それにしても前次官の動向は『見張られていた』ということである。６月１日号週刊文春のインタビュー記事が出ることが事前にわかっており、発売前に出会い系バーをぶつけてくる情報収集力と情報の利用は恐ろしいものである。これからは一般人でも、官邸にとって都合の悪いものはマークされそうである。
ところで前々号“もらい事故”と紹介した首相夫人付き公務員は、海外赴任になったらしい。形式的には栄転ということで、海外であれば報道も近づきにくくなる。一方、今回の文科省のメール調査で名乗り出た人はどうなるのであろうか？ 文科省内部で孤立無援になっているかもしれないが、今は辛くとも自分に嘘をつかないことが、よい結果につながると信じている。
少々筋違いかもしれないが、都議選では意地を見せたいものである。加計問題はＧ民党の確信犯、Ｇ民党は都議会でもブラックボックス。ここで一矢を報いたい。
それにしてもここ数日の首相と官房長官の発言は、支離滅裂で論理が破綻している。この問題に対して一点の曇りもないと言いながら、獣医学部は何校でも作ってＯＫと言ったり、獣医学部の競争率は高いと言ってみたり、問題の本質からそれるような支離滅裂発言である。
認可は一校だけでもよいが、みんな同じ条件でスタートして実力で競うなら何も文句はない。ところが、表面に出ないように工作しておきながら正当な手続きだという欺瞞を正当化しているのが許せないのだ。一刻も早く首相とお友達には退場願いたい。
：おまけ：
ＴＢＳテレビ「小さな巨人」は面白かった。ドラマは警視庁が舞台だが、現実の世界では、官邸、内閣府、文科省で起こっている。登場人物の出世や組織の論理に対する考え方は、現実世界によく似ている。