月刊ライフビジョン | 地域を生きる

自治体の計画づくりとコンサルの暗躍

薗田碩哉

 「近ごろ役場で流行るもの、コンサル、パブコメ、ワークショップ」・・・こんな落書を市役所の入り口に貼り出したい気分である。市が市民生活全般にわたって打ちだしてくるナントカ計画なるものは、市民の皆さんの意見を徴して作られているという建前だが、それを切り盛りしているのは実はコンサルタント会社の諸君なのだ。そしてコンサルさんは市民参画のひのき舞台みたいな口吻でワークショップをおやりになり、立派な? 計画を仕上げるとそれを公表してパブリックコメントなるものを募集され、パブコメの締め切りを過ぎたと思う間もなく、計画は堂々と市の広報を飾り、粛々と実行に移される。

 私たちが3年来、問題にしている町田市鶴川図書館の廃止計画も、実に整然と進められた。団地の商店街にある可愛らしい図書館は、幼児から高齢者まで、日々の暮らしを活性化してくれる大切な場所なのだが、市はバスで10分かかる駅前にホールや集会施設とセットにした図書館を新設したので、団地の中の図書館は駅前に「集約」するという計画を打ち出した。集約とは何やら立派な言い方だが、要するに団地図書館は廃止するということだ(こういう用語の使い方も巧妙だ、コンサルの入れ知恵だろう)。

 計画が動き始めると、先ずは関心のある住民を集めて図書館をテーマにしたワークショップを開いた。参加した市民は例外なく、図書館を愛し、その存続を希望する人たちばかりだ(図書館を廃止しようという市民などいるはずがないし、たとえいても来るはずがない)。それを承知の市とコンサルは、そこでは図書館廃止のハの字も出さず、「もっといい図書館にするにはどうするか」なんてテーマで小グループの討議をやってアイデアを出させ、ラベルに書いて貼り出して、お決まりのKJ法式のまとめをやっていた(こういう運び方はコンサルの得意技だ)。

 ところがその後に出された計画は、市民の議論などこれっぽっちも生かされず、原案は微動もせずに本案となり、その後に開かれた図書館協議会でも、生涯学習審議会でも、総仕上げの教育委員会でも、あらゆる反対意見を無視して原案通り通過してしまった。「市民の意見を聴いたのか」という委員諸氏の疑問は当然に出されたが「ワークショップを行って十分議論を尽くしました」というお答え。何と廃止のハの字もなかった熱い討論会は、廃止計画の実績づくりに利用されてしまった。近ごろ耳に親しい「偽装、捏造、安倍晋三」という語呂合わせがあるが(佐高信の著書のタイトルにもなっている)、今や国政から自治体まで偽装、捏造に事欠かないのがこの国の姿なのである。

 こういうシナリオはいったい誰が考えているのだろう。すでに4期目に入った市長は、人口縮小時代に行政再編は必至という錦の御旗を振り立てて、公共施設の削減を金科玉条にしているご仁である。もっとも市民に人気があって市長を続けているわけではなく、他に適当な候補者が見つからないからズルズルやっている(この辺もお国と同工異曲である)に過ぎない。市の上層部の面々は(知らないわけではないので)大した知恵も度胸もなさそうな方々ばかりだ。ところが政策について議論する委員会は、図書館の場合をとってみれば、図書館運動推進の立場か、少なくとも図書館に理解を示すメンバーで構成されているわけだから、削減計画など議題にして通るはずがない。市長の気持ちを忖度する部長連は、どこに活路を求めたらいいのか、大いに悩んだに違いない。

 そこで登場するのがコンサルタントの皆さんである。市民の意向を汲むふりをしながら、上の決めた方針をできるだけ抵抗少なく貫徹する秘策をお教えしましょう―これに乗らない手はない。かくして市・コンサル連合軍が編成され、小うるさい市民の扱い方について日夜研究に余念がない。それにしても、この見事な手順を進めるのに市はコンサルに一体いくら払ったのか知りたいものだ。(以下次号) 

「地域に生きる」60
【里山のスナップ】焚き火と遊ぼうパン

 里山の田んぼで大きな焚火をした後、その燠(おき)を使ってパンを焼く。笹竹の先に発酵させたパン生地を細長く巻き付けて燠にかざしてじっくりあぶる。

 やがてパンが膨らんでこんがり焼けたのを笹竹から外し、真ん中に開いた穴にジャムを流し込んで美味しくいただく。名付けて「遊ぼうパン」


薗田碩哉(そのだ せきや) 1943年、みなと横浜生まれ。日本レクリエーション協会で30年活動した後、女子短大で16年、余暇と遊びを教えていた。東京都町田市の里山で自然型幼児園を30年経営、現在は地域のNPOで遊びのまちづくりを推進中。NPOさんさんくらぶ理事長。