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制度いじりには思慮分別を

音無裕作

 来年に予定されるオリンピックでのマラソン・競歩会場を札幌に変更した件で、IOCを批判する声を聴きます。確かに、この期に及んで当該組織にきちんとした相談もなく、なかば強権的ともいえる勢いで発表したことは褒められたものでありませんが、IOCばかりを批判するのもおかしくありませんか。

 そもそも、近年の8月の東京で屋外競技を行うこと自体に無理があることは、多くの人たちが気付いていました。とくにマラソンに至っては危険を承知の上で、道路を遮熱舗装したり、沿道に植樹したり、ドライミストをあちらこちらに設置したり、さらには早朝どころか夜中ともいえる時間に競技を行おうという、自然をねじ伏せるがごとき計画自体も正気の沙汰ではありませんでした。批判されるべきは、この時期に東京でオリンピックを行おうと計画した人たちでしょう。

 突然の計画変更といえば、大学入試センター試験もしかりです。英語試験の変更だけではなく、最近では国語や数学の記述式試験にも疑問の声が上がっていると聞きます。私は試験内容も採点者の学生アルバイトの技量も知らないのですが、これらに疑問を呈する報道などは少なくなかったように記憶しています。

 今回のセンター試験改革の主な目的である、“単なる詰め込み教育による知識だけではなく、総合的な学力で評価したい”という意図は、素晴らしいと思います。

 センター試験は1990年に始まり、その前身には大学共通第一次学力試験というのがありました。マークシートによる試験は、その共通一次から採用されていますが、これが発表された当時も「マークシートなどという単なる選択式の問題で良いのか」という批判は少なくありませんでした。

 一つひとつの国公立大学で、多くの学生の総合的な学力評価をするのは大変です。私の認識では、まずは一次試験で知識をざっくり選別し、総合的な学力については、それぞれの大学の特性に合った二次試験によって、絞られた受験者の中からじっくりと吟味選考を行うシステムなのだと捉えています。

 計画をする大人たちにとっては「毎年あること」でも、当事者である子どもたちにとっては、その年の試験が一世一代ともいえる大勝負です。どうか、政治家の思い付きや利権で振り回すようなことの無いよう、教育に精通した有識者を中心に綿密な計画を練りに練ってから、公表、実行していくような慎重さを持っていただきたいと願います。

 加えて、風邪やインフルエンザの蔓延する時期に試験を行い、わずか数日の短い期間で採点・評価を行わなければならないという時期と期間の問題にも、まだまだ検討の必要があると思います。どのような試験方法が最善かは知る由もありませんが、アントニ・ガウディのごとく「明日はより良いものを」と常に改善を求めてほしいと、受験生の父は気をもんでいます…と、キーボードから離れたところに、夏の甲子園見直しの文科大臣発言が…。過ちて改めざる、是を過ちと謂う 。教訓が生きたのでしょうか。