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国民を侮る政治家は許さない

渡邊隆之
 「あなたたちを決して許さない」923日、16歳のグレタ・トゥーンベリさんが国連気候行動サミットで発した言葉である。これだけ異常気象が続き各地で被害が起きているのに、各国の政治家は目先のお金や経済のことばかりで何ら策を打たない、と。ごもっともである。トランプ氏とニアミスした際、グレタさんがすごい形相でにらみつけていた。ある大国は氷河が解けた後、新たな航路ができるとか、海底資源を利用できるとか色めきたっていたが、人々の日々の暮らしにどんな影響が起こるのか考えていない。あまりにも想像力に乏しい。
 環境問題ばかりではない。安全保障や経済問題などでもそうである。アメリカ・ロシアとも他国に大量の武器を買わせているが、「防衛のため」と修飾するも所詮、武器は威嚇の道具である。その武器により傷つく人、家族を失い将来の夢を絶たれる人、難民になる人がいる。傷つけた側も精神疾患や薬物依存に陥ったり、自殺したり、ハッピーになれない。
 以前、長崎原爆資料館を訪れた際、アメリカとロシアの核爆弾の保有数が突出している展示を見た。この2国だけでも地球を無限に破壊し続けることが可能だ。過去の悲劇を繰り返さないようにと核不拡散条約や核兵器禁止条約ができたのだが、核保有国の反応は鈍い。唯一の被爆国日本もアメリカの核の傘の中に隠れている。為政者が本当に望むなら、非核化に向けてもっと実効性のあるルールができているはずだ。それができないのは、為政者の本心が別のところにあるからではと推測する。
 我が安倍政権は次の国会で憲法改正論議を進めたいという。それが国民の期待であるかの話しぶりである。しかし、多くの国民は前の選挙でそのような意思表示をしていない。昭和天皇の拝謁記では先の戦争について、「国民に謝りたい」という気持ちを明らかにされた。軍部が天皇の名を使って無謀な戦争を継続した。それにより、原爆が投下され、国土が焦土となり、敗戦後もシベリアで多くの日本人が抑留されるなど多大な被害を自国民や他国民に与えた。しかも、軍部の実質的な支配者の責任や歴史検証についてはうやむやのままである。
 法律等の法規範を定立する場合に必要なのは、まず現場レベルからみた状況把握・問題点の洗い出し・解決方法の検討と選択である。いまの政権や官僚トップに適切な分析ができるのか甚だ疑わしい。
 今回の千葉の台風被害について、国は災害対策本部を設置しなかった。菅官房長官は「対応は適切だった」と自賛したが、それを判断するのは被災者や国民であろう。「憲法で緊急事態条項があれば対応できた」と、憲法改正にこぎつけたかったから放置されたのではないかとの穿った見方まで出てきている。先の選挙で「国民の生命、身体、財産を守る」と叫んでいたのはいったいどこの政党であったか。本心であれば、なんらかの働きかけができているはずではないのか。前回の西日本豪雨被害の教訓は生かされず、「赤坂自民亭」の議員を改造内閣で入閣させるなど、国民への侮りを強く感じる。
 いよいよ本日から、中小企業を困らせ景気を減退させる消費税が増税される。しかし定期購読の新聞は消費税8%のままというから是非、新聞を定期購読して、関連部署に貴重な「世論」をぶつけたい。