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さながら文化祭! チャリティオークション23報告

ライフビジョン学会

 皆様からたくさんの金品を無償提供いただいて、お金に変えて、自然災害や紛争に巻き込まれた皆様にお贈りするライフビジョン学会の「チャリティオークションパーティ23」は2018年12月8日土曜日午後、東京新宿・京王プラザホテルで開催いたしました。

 23年目の今回もまた、いくつもの「モノ語り」が生まれました。

 その一つ、写真の美しい工芸品はどなたかのお宅の年末大掃除で発掘されたものらしき。長手サイズは5~6cm、ガラス瓶の内側に施された画と「仕女亥寅秋作」の文字。どのように作られたものか、加工方法を巡って会場準備のスズメたちが囀る。内瓶の外側に施画して、周りをガラスで固めたものだよ。いやそれでは外側ガラスの加工熱で絵が流れるょ…。何しろ4千年の文化を今に伝える中国のこと、ミステリーのベールはなかなか外せない。

 そもそも何に使うものか。仕女(女の召使)に背を向けるやんごとなき若君と、何やら曰くのありそうな図柄からして媚薬入れか? スズメたちの連想は金瓶梅の潘金蓮と西門慶にジャンプする。

 この工芸品がいよいよオークションにかけられると、常連参加者のN夫人がハイッ、「これ、ウチにもあります。この絵は内側から、先の細い細い筆で描かれているのです。」参加者からホーッともOh!とも付かぬ声が上がった。L字型の筆で内側から絵を描いた工芸品で、鼻煙壷(びえんこ)と呼ばれるものであった。

 ネット検索の助けを借りると、昔は「嗅ぎタバコ」(鼻の粘膜で粉状のニコチンを味わう)の容器として使われていたが、今では美術品として扱われている。茶色っぽく見えるフタは瑪瑙(メノウ)で、液体などモノを入れることを想定しない観賞用。ネット上で展示されていた「手描き内絵ガラス瓶」 の鼻煙壷には、 単価5-6千円の値がついていた。ふむふむ、言われてみれば古い西洋映画で、片方の鼻腔を指で押さえて掌に載せた何かを吸い込む、あのしぐさが何かわからなかったが、思わぬところで答えに出会った。
 この鼻煙壷を射止めたのは、会場である新宿京王プラザホテル・メインバー「ブリアン」マネジャーの石橋さん。非日常の空気を宿すこの逸品、どうやらバーという絶好の居場所を得たようである。

 話を最初のプログラム、「カクテルオークション」に戻そう。バーテンダーの世界ではそれぞれの技量を磨くコンテストが盛んだが、その作品であるカクテルをオークションする嗜好である。

 石橋マネジャーが「エントリーナンバー1番!」と最初の演者を紹介すると、赤いジャケット姿の高野さんが登場した。入社以来27年間、バーテンダー一筋に精進し、2000年にHBA(一般社団法人日本ホテルバーメンズ協会)のカクテルコンペテーションで総合優勝グランプリ、運輸大臣賞をダブル受賞して、赤ジャケットを着る栄誉を得た。石橋さんが「赤いジャケットは全国のバーテンダーが目指す場所、日本チャンピオンの証なんです」と紹介すると、オーと盛大な拍手。日々の地道な仕事に精進し、衆目を浴びて演技する晴れがましさが、笑顔になってこぼれる。

 ここではハバナカクテル・コンペテーション世界大会で3位を獲得した「ハバナランハ」を実演。「濃縮パッションフルーツジュース、口の中で様々な味わいを楽しんでいただきます。」出来たばかりのハバナのカクテルは初値一杯3千円からせり上げて、4500円のカンパ金を生み出した。ここで落札者にインタビュー。「ご感想は?」「アジアの味がします。」すみません、ハバナはアジアではないのでして…(笑い)。トロピカルと言いたかったのでありましょうか。

 続く二人目の選手、中根さんも各種の大会で好成績を納めたカクテル「エルフレール=親愛なる兄弟を披露。クロのビロードを貼った台座に白磁の蓮華、そこに自家製のパイナップルをビネガー入りシロップでキャラメルにしたもの(シュラブ)を載せて、カクテルとともにいただく。中根さんが説明する材料のこだわりと薀蓄は、はぁ、へぇと応じはするものの、味覚の想像を組み立てられない。お客にもそれなりの修行が必要なのである。

 参加者はもうカウンターの周りに集まっていて、「親愛なる兄弟」が出来上がるや否や「一杯3千円!」と声が飛ぶ。司会は間髪いれず、えっ?3500円、さっきのカクテルは4500円でしたが。(笑い)

 良品廉売、商道徳の常識を外れそうなこのゲームも、全てはご苦労された皆様へのカンパ金獲得のためと、司会は顔で笑って心を鬼に(?)価格を吊り上げ、応ずる参加者も笑いながら、囃しながら、もちろん財布と相談もしながら、盛り上げたのでありました。

 さて、チャリティオークション23回目の2018年は、さながら「手作り品の文化祭」。働くばかりではなく、暮らしを楽しむ生き方・実践報告祭ともなった。

 初代手作り品の登場は額入りレリーフで会員Oさんの奥様作であった。会員Aさん夫人からは手作りのサンキライ(赤い実)のリース、そして会員Nさん奥様ご提供「マダムNの沙織織マフラー」は不倒の連続出場中。Mさん手作り干支のマスコットは毎年10体ずつ、そろそろ12支が揃いそう。手作り梅酒、手作りみそ、庭先のゆずの実ひと箱、箱入り下仁田ネギなどなど、生活感豊な実用品も登場した。中でも「落札者のご自宅直送冷凍猪肉のスライス」は、カンパ金獲得額通算でNo.1と言えるだろう。仲間たちと資金を出し合って罠や猪檻、スライサーを設備したという広島のKさんが、野生の猪と知恵比べの果てに射止めたジビエである。

 会員Sさんのカンパ品は、キャンプでトレーニングを積んだ「手作りローストビーフ」。趣味が昂じて自宅ベランダに「自作のオーブン」を設置してしまったとかで、味はなかなか玄人はだし。一方郊外に住む会員Iさんは、友人が作る非売品のベーコンやジャムを持参した。

 手作り品の中でも出色は「覆面画家・バンクシーの絵画」。バンクシーは表舞台には姿を見せず、世界各地の町の壁やビルに画を描き残すが、その作品は非常な高値でやり取りされている。その一つ「風船と少女」は、今年のサザビーズ・オークションで140万ドルで落札!された直後に、「風船と少女」落札直後にシュレッド!という話題作。

 これに連帯したのが月刊ライフビジョン執筆陣の一人、POOHさんの「少女と風船」。こちらのシュレッドは何回でもリプレイ可能で早速、会場内に人だかりを作った。

少女と風船

注・↓これはオリジナル作品です。

「少女と風船」

これからの新年会にちょうど良いと、4千円で落札!

当日のカンパ品一覧はここ

 会場には6歳のHちゃんから、この日74回目の誕生日のTさんまで総勢29名。参加者全員による♬ハピーバースディが歌われたのは、23年間で初めてのことだった。

 こうして会場内外の皆様のご参加をいただいて、現金カンパも頂いて、築き上げた275,000円は12月11日、国際人道支援を続けるAMDA(岡山県)の緊急医療救援活動に送金した。

 

ライフビジョン学会のカンパ活動はこれまで23回、会場参加延べ1,248人、合計金額が8,106,919円となりました。

 応援いただいた皆様、中心を担った会員と理事の皆様、そして毎年舌好調!のトークで参加者の財布を緩めててくださるオークショナーの大下政勝さんに、深淵なる感謝を申し上げます。ありがとうございました。(編集部)