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いよいよ小学生にプログラミング教育

音無裕作

 私はあまり手先が器用な方ではないが、子供のころから父の日曜大工を手伝っていたおかげでのこぎりやトンカチなどはある程度、使うことができる。父の遺した工具類が充実しているので今でもたまには本棚や郵便受けなど簡単な工作物を作ることがあるが、悲しいかな美的センスに欠けるため、他人から見て褒められた作品を作られたためしがない。おまけにドジな性格のため、寸法を間違えて所定の場所に収まらなかったり、肝心な用途を満たさなかったりと、失敗作も多々ある。

 2020年から小学校でのプログラミング教育が始まるという。どんなことをやるのかよくわからないが、子供のころからスマホを持ち、家電製品と話をしたり、車が勝手に動いたりする時代に生きるには、読み書きそろばんに続く大事なスキルとなってくることだろう。それに、プログラムを作るために必要なフローチャートのような考え方は、工場での動線や工程の設計など、職業実務上も欠かせないと聞いた。

 先日、小学生のプログラミングコンテストの模様をニュースで見た。幼い小学生が、優れたプログラムを書くということはもちろん驚きだが、何より感心したのは、そのプレゼン能力だ。大勢の聴衆を前にして、高学年の子はもちろん3、4年生の子たちまで立派に、滑らかに、自分の開発したプログラムの内容やビジョンなどを説明している様子は、感動モノだった。いい大人になってから20~30人の前で、議案書を読むだけで緊張して足が震え、おどおどしてしまった私とは大違いである。

 さらに感動したのが、プログラミングの内容だ。受賞作の一つ、小学5年生の女の子の開発したプログラムは、スマホなどの写真から刺繍に起こすための図案とやらを作成し、必要な材料まで提案してくれる作品らしい。正直、プログラミングのことも刺繍のこともよく知らない私には、どのくらいスゴいことなのか、いまひとつよくわからないのであるが、「自分のために刺繍でいろいろ作ってくれるおばあちゃんの手助けのために」アプリでそれを解決しようという、創意工夫の発想にひたすら感動した。

 プログラミング教育の核となるであろうフローチャートやプログラミング言語の学習は、いわば単なる道具の使い方である。言語は時代とともに変遷し、それに併せた新たな道具に関する知識がこれからも必要となってくるだろう。

 その道具を使ってどんなものを作るかという創造力には、学校だけではできない経験や環境が必要になることだろう。机や端末に向かって勉強するだけではなく、刺繍や工作、そして様々な遊びや旅行といった体験を通して、改善の種を見つける感性やそれを解決する創意工夫の力を備えた、真のイノベーターが誕生することだろう。後生畏るべしである。