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公職選挙法改正について思うこと

渡邊 隆之
 7月18日、今国会で改正公職選挙法が成立した。参議院の議員定数を6増すというアレである。自民党安倍晋三総裁は下野した際に野田首相との党首討論で議員定数削減を実施することを約束し、衆議院の解散を迫ったはずである。自民党には憲法との適合性、人口減少下での予算増ともなる点も踏まえ、十二分に説明責任を果たしてもらいたい。
 ちなみに新聞報道によると、今回可決された自民党参院選改革案は以下の内容という。
 3年ごとに半数改選のある参議院で選挙区を1議席、比例区で2議席増やす。(1票の価値がもっとも小さい埼玉選挙区を3議席から4議席にする。比例区では改選数を48議席から50議席にする。)
 比例区では非拘束名簿式を採用し、各政党の名簿で掲げられた候補者は得票順で当選するのが原則だが、今回の改正法で例外的に、優先的に当選できる特定枠を設けることができるようになり、しかも特定枠の個数は各政党で自由に決定できるらしい。選挙区の合区で漏れた県の候補を救済するもののようである。
 なお、参議院議員の任期は6年のため、全議席の改選がされる6年後に議員定数が6増えることになる。
 ところで、そもそもなぜ選挙制度は国会で決められているのだろうか?
 憲法47条は「選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。」としている。国会は主権者たる国民により選ばれた議員により構成される。そこで、民主的基盤があると想定される国会に選挙区等についての裁量権限を認めたのである。もっとも、憲法は法律の上位規範なので、憲法の趣旨に反する選挙制度は違憲無効となりうる。
 現行憲法は、国会が時の政府に都合のよい選挙制度を恣意的につくることまで許容していない。公正な選挙制度を定めることが憲法の採用する国民主権主義の要になるからである。選挙制度に歪みが出た場合に、まずは有権者による国政選挙によって真摯な代表者を選び選挙制度を正すべきであるが、それが困難な場合には政府・国会とは別の第三者機関に決定させるよう憲法改正しなければならないかもしれない。
 今回の選挙制度をみてもそうだが、私は憲法改正云々よりもむしろ政党のあり方について規律すべき時期に来ているのではないかと思っている。
 まず、二院制。
 人口減少もしているし、参議院は機能していないから要らないのではとの意見がある。そもそもいまの憲法が衆参二院制を採用したのは、異なる性質の二院により慎重に審議するのが究極的には憲法13条の個人の尊厳確保に資するからである。衆参院が同質化したのは、特に与党が党議拘束をかけ参議院を衆議院のカーボンコピーとまで言わしめる事態にしたからであり、憲法の趣旨を理解しない政党、国会議員に問題がある。
 次に、地域代表制。
 この度の自民党は特定枠という手段で過疎地等の意見を反映させようとする。まず、国政選挙で選ばれた議員は「全国民の代表」であり、特定地域の代表ではない。また、国政選挙は国会議員を選ぶものであり、政党にすべてを丸投げするものでない。
 さらに、選挙の際、政党の中身が雑多で選べないという問題もある。例えば自由民主党の中でも全体主義的な発言をされる議員も多数おられる。一般の商品で名前と中身が違えば、すぐに消費生活センターへのクレームで改善がなされるが、政党についてはそうもいかない。
 政治的意見を同じくする人の集団というのが政党の定義である。まずは本当に政治的な考えを同じくする方が集まり、しかるべき名前の政党名をつけていただけないだろうか。国民の意思を十分に反映するための選挙制度改革はまずそこからのような気がする。