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電動車、なにで動かすか?

音無裕作

 カジノ法案の審議において、野党議員から「カジノより学校にエアコンを」とプラカードを出されたことが効いたのか、急遽、菅官房長官が政府として小・中学校へのエアコン設置の支援を発表しました。細かいコスト試算や既にエアコン導入済みの自治体との調整はどうするかなどの議論を省略しての早急な対応は、総裁選を控えているおかげと判断したら良いのでしょうか。

 それにしても、今年の暑さは半端ないレベルですね。このままでは電力不足が心配です。

 経産省の官民会議「自動車新時代戦略会議」では、2050年までの乗用車が排出する温室効果ガスを2010年比で約9割に削減することを目指し、50年までに日本メーカーが世界で販売する自動車を100%電動車にする目標を定めました。専門家の間では、「50年とはずいぶん悠長な」と言われたり、「本当に脱内燃機関などできると思っていないのでは」などと、意見が分かれているようですが、ここでいう電動車には電気自動車だけでなく、ハイブリッド車や燃料電池車なども含まれるため、日本はすでに2017年時点で31.6%(欧米や中国は3~5%)に達しています。

 エンジンが主体のハイブリッド車や、水素などのガスを燃料とする燃料電池車ならともかく、充電をメインに考えた車となると、その電力の供給元も問題となってきます。現在の日本のように化石燃料を使った火力発電が中心では、乗用車を電動にしたところで、トータルの環境改善効果があるのか疑問です。だからと言って原子力発電をというのも、安全性やトータルコスト、そして廃棄物問題など、個人的には納得しがたいところです。

 頼みになりそうなのは太陽光発電や、水力、風力、潮力、地熱などの再生可能エネルギーですが、特に日本では、これらの発電への本気度が感じられません。やはり、原発の政治利権が大きいのでしょうか。一時期ブームの太陽光発電も、買取価格の低下によってすっかり静かになった気がします。売電価格に見合った初期投資や維持コストは最大の問題点なのかもしれません。

 しかし、再エネの技術革新は世界的にものすごいスピードで進んでいます。労働コストの低い地域で設備等の大量生産がさらに進めば、いずれは火力・原子力よりもコストパフォーマンスに勝るエネルギーとなることでしょう。

 欧米の一部の国では、既に再エネが補助金に頼らず、自立したエネルギーとして運営されており、火力発電よりリーズナブルなケースもあると聞きます。日本でも、日本の環境にあった風力・水力発電機などを開発しているベンチャー企業も出てきているそうです。そうしたイノベーションにより再生可能エネルギーによる発電がメインになって初めて、電動車普及の真価が発揮されるようになるのだと思います。

 とはいえ尋常ならぬこの暑さ、一刻も早く小・中学校や家庭にエアコンが配備されることを切望しますが、願わくは昭和時代の「我慢すれば何とかなる」レベルに戻ってくれるよう、地球温暖化の原因の一つともいわれる人間の産業活動もクールダウンしてはいかがでしょうか。