論 考

アメリカの大矛盾

 トランプの扇動による連邦議会議事堂襲撃事件で訴追された人の8割は一般市民だという。異常な政治的思惑など持たない人だったとすれば、なおさらトランプの扇動は悪辣だという事実である。

 トランプは自分が正しい、絶対的存在だということしか頭にない。その構図が自分の内部で壊れたら、黒を白という彼の発言を含めて、彼は瓦解するしかない。

 もし、トランプが自己中毒者でなく、誠心誠意、自分の発言行動がアメリカのためだと考えているのならば、それは革命だろう。

 アメリカは南北戦争後、建設的妥協をする政治を推進してきた。トランプの試みは、まあ、異端である。

 トランプ支持者は本当に彼の発言に疑惑を持たないのだろうか? 田中角栄が逮捕されたとき、支持者には、子が飢えているのを見かねて子どもに与えるために悪さをしたのだから全面的に支持すると語った。

 その政治信条は、話し合ってなにごとかを決めるのではなく、自分たちの利益に適うか否かしか判断基準がない。

 民主主義以前の人格であるトランプは、アメリカを民主主義以前へ引き戻すための楔を打ち込もうとしている。

 このようなアメリカが、あたかも世界秩序はアメリカのためだという態度を押し出し続けてきたところに、現代世界最大の矛盾がある。岸田的先走りの危険性を指摘しないわけにはいかない。

 ペンス氏は副大統領のとき、トランプから「自分と憲法とどちらかを選べと言った。わたしは憲法を選んだ。これからもそうする」と語る。正しい!