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政治選択できる幸せについて

音無 祐作

 世界征服を目論む秘密結社と聞けば、悪い連中としか想像できませんが、ある秘密結社の総統、小泉鈍一郎が目論む世界征服の野望の裏には、「世界を一つにし、平和な世の中を作りたい」という願いが隠されています。――というのは、アニメ「秘密結社鷹の爪」での設定のお話。コメディー作品とはいえ、現代社会への皮肉が込められているように感じます。

 一方こちらは、このところテレビと劇場アニメとして復刻している「銀河英雄伝説」での一幕。主人公のひとりであるヤン提督は、自分の属する、民主主義国家ながら、汚れた政治の内情から民衆の生活と平和をないがしろにしている自由惑星同盟と、近年、専制国家である銀河帝国に誕生した新たな最高権力者が門閥貴族の既得権益を取り上げ、民衆の自由と平等を拡げつつある状況とを較べながら、いったいどちらが民衆にふさわしい政治体制なのか、思い悩んでしまうシーンがありました。

 昨今の現実社会でも、民主主義的な選挙を行っている国々においても、ポピュリズムやバラマキ政策などにより、好ましからざる政治家が実権を握る例が散見されます。

 一方で、だいぶ昔のテレビ番組で専制的、独裁的な政治体制でありながらも、民の幸せを第一に考え、国民が幸せに暮らしている国家を紹介していました。その内のある国では、国王が自ら王制廃止の意向を示し、民主国家への生まれ変わりを提案したものの、国民の大多数の反対により、却下されたというような話もありました。

 とはいえ、そのような体制で実際に、民衆に幸福がもたらされている国は決して多くはありません。また、国のトップが、たとえ民衆の幸せを願って政治を行っていたとしても、誤った施策を指摘したり正したりできる存在や、国民の選択権が無ければ、不幸な結果へとつながりかねません。総合的に考えれば、現時点で、多くの民衆を幸せにできる可能性が最も高いのは、「民主主義」だということになることでしょう。

 しかし、政治とカネの問題が次々と明るみに出ようとも、不適切な反社会的組織などと政権との癒着問題がのらりくらりとかわされようとも、はたまた国の財政を将来的な破滅の方向に誘導しようとも、他に選択肢がないから、あるいは従来からの支持政党だからと言って、3分の1以上の支持を得続けられるようでは、不安が募るばかりです。棚ぼた民主主義の私たちの国では、いまだに選挙といっても、「お上」の権力争い程度にしか、捉えられていないのかもしれません。選挙がまともに機能していない全体主義国家では、民衆にはどうすることもできませんが、私たちには正しい選択をするチャンスが与えられています。

 今年、2023年には、各地で地方選挙が予定されており、さらには衆議院選挙の可能性も示唆され始めています。

 政治に緊張感をもたらすためにも、私たち有権者がしっかりと知識を養い、きちんと投票活動をすることで、この国の将来が明るいものとなることを期待し、祈りたいと思います。