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物価上昇は政府の無為無策!

 10月になっても物価の上昇は止まるところを知らず、食品の値上げは6500品目以上に及び、月別では過去最多になるという。

 8月の消費者物価上昇率(総合)が+3.0%と30年9ヵ月ぶりの上昇率となった。1年前が-0.4%だったので隔世の感さえある。しかし、実際はもっと上がっているという感覚ではないだろうか。燃料代では電気代+21.5%、ガス代+20.1%、食料品では食用油+39.3%、パン+12.4%、麺類+11.5%など、身近なものが軒並み2桁上昇率となっているためであろう。

 物価上昇の本質は輸入物価の上昇であるが、最近では長年価格を据え置いてきた商品をこの機会に値上げしてしまおうという便乗値上げも見受けられる。

 これに対して政府のとった施策は、小麦価格上昇回避のための税金投入、ガソリン・軽油・重油・灯油の価格抑制のための補助金、住民税非課税世帯に対する5万円給付、そして過度な円安に対する為替介入などである。

 余りにも小粒に過ぎる。これでは、それでなくても悪化を続ける財政の悪化を助長するだけであり、後に増税となって返ってくるだけである。何よりも効果が限定的である。この国のリーダーにはピンチをチャンスにするという発想はないのだろうか。

 例えば、軽油・重油・灯油の価格抑制のための補助金ではなく、EV車や再生エネルギーの普及促進であり、住民税非課税世帯に対する5万円給付ではなく、公的年金制度の抜本的改革である。

 政府の無策の背景に、物価の上昇はいずれ沈静化するという予測がある。それは必需品を扱う小売業では仕入価格の上昇に伴って販売価格を引き上げやすい一方で、選択的支出に当たる宿泊・飲食サービスやレジャー産業では価格転嫁が進みにくいという状況が見られることである。ウクライナ戦争もいずれ終わるということもあろう。

 だからといって大きな施策を打ち出さない理由にはならない。なぜなら、コロナ禍において働き方が見直され在宅勤務が促進されたように、EV車や再生エネルギーの普及促進や公的年金制度の抜本的改革はいずれ通らなければならない道だからである。政府の覚醒に期待したい。