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「労働力商品」を磨く組合活動も

音無祐作

 みなさま、あけましておめでとうございます。まもなく春闘が胎動する季節です。今年もまた官製春闘の追い風も感じられますが、海外に目をやるとエネルギー価格を中心に物価の上昇もみられて、大事な交渉となりそうな予感がします。

 日本国内でも企業物価は上昇基調にあり、アルバイトの時給も人手不足を背景にじわじわと上昇しており、春闘においてもベースアップへの期待は膨らんできそうです。

 賃金交渉こそが労働組合の役割と考えているような人たちからは、すっかりその存在意義を疑問視されてきていた単位組合や産別組織としては、面目躍如のチャンスといったところでしょうか。

 ところが、ベースアップの議論における大事な指標のひとつである消費者物価指数は、変動の激しいエネルギーや生鮮食品などの影響を除かれた指数が主に使われ、おまけに前政権肝いりの携帯電話料金引き下げも影響して、いま一つ上昇のペースは緩いものとなっています。私たち消費者も、ここ数十年のデフレ基調にすっかり慣れっこになってしまい、同じような商品ならより安いものを買うという習慣からなかなか離れられません。

 しかそんな中でもバルミューダのトースターやコーヒーメーカー、ダイソンの掃除機や扇風機などは、そのデザインや機能などの商品力の高さから、例え同種の製品と較べて価格が高かったとしても、多くのユーザーに受け入れられています。とびぬけた商品力があれば、価格競争は問題ではないという事実の証左だと思います。少し語弊はありますが、労働者にとっての商品力とはその人が持つ労働力、すなわち個人の能力や知識などであり、賃金はその商品に対する価格と考える事もできます。賃金という価格の上昇を目指すには、労働力という商品力を磨き、魅力を増していくことが大切です。そこで。

 労働組合はひとつの社内、組織内でも幅広い職種の人間が集まる組織であり、産別ともなればさらに多様な人たちが集う智慧の場でもあります。総務で働く人には当たり前でも、営業の人にとっては新鮮な知識だったり、技術の人の話を聞いて改めて、自分たちの会社の強みを知ることができたりすることはないでしょうか。単位組合や産業別組織は、そうした知識の共有、勉強会を催す絶好の機関ではないかと思います。小さい頃から勉強というのは、「させられるもの」という認識が強かった気がしますが、知識を習得できる「勉強」の機会は、歓迎すべき重要なものであるはずです。

 勤務時間外で会社のための勉強をするのはサービス残業ではないかともいわれそうですが、会社のためではなく自らの、いざとなれば会社の外でも通用する「労働力商品」のスキルアップだと思えば良いのではないでしょうか。

 組合の力で組合員の能力を高め、「余人をもって代えがたい」集団を形成することによって、結果として企業も繁栄し、分配もベースアップする。そんな活動を進められたら、労働組合の存在意義もさらに高まるものと思います。