みんなのコラム

テーマは「生命と自然」

POOH

 夏期スクーリング1番目の科目は「絵画Ⅲ」である。3年次の必修科目で、そのテーマは「生命と自然」である。何を描くのかというと人体(ヌードモデル)と観葉植物を組み合わせたモチーフである。前半3日間がクロッキー(線だけによる素描)とデッサン。後半3日間で油絵の作品(F30号キャンバス)に仕上げる。

 最初、「生命と自然」という漠然としたテーマに戸惑った。しかし良く考えると自然の風景に佇む人物を描いた有名な絵画は数多い。ダ・ヴィンチの「聖母」しかり、ルノワールやセザンヌも森の中の人物を描いている。ここは素直にモチーフを観察して「見た目どおり」に描くことに徹することとする。

 しかしこの「見た目どおり」というのが、奥が深い。見るということは眼球に入ってくる光を感じることではない。その刺激が脳細胞に伝達され、私の過去の記憶と照合されつつ認識しているのが見るという行為である。単純に見た目どおりの「色や形」だけではないのである。

 そう考えると「生命」も「自然」もただ漠然としているだけではなくなってくる。観葉植物に囲まれたヌードモデルの背景に、かつて訪れた「モンゴルの沙漠」を感じ、「万物は水でできている」といった哲学者の言葉から、人体も植物も基本元素の大半は「水素」なのかと想像をめぐらすのである。果たしてどんな作品が出来上がるやら。やはり絵を描くのは面白い。