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渋滞は御免だけれど

音無祐作

 日本医師会から我慢の三連休と言われていた11月の21から23日でしたが、Go Toトラベルやイートのキャンペーン効果もあり、各地の行楽地は大勢の観光客でにぎわい、一部の高速道路では、渋滞も発生したようです。

 最近販売されている自動車には、高度な運転支援システムが備わり、設定した速度の範囲で、自動的に前の車に追従してアクセルやブレーキをコントロールしてくれたり、車線を逸脱しないようステアリングを補助してくれたりと至れり尽くせりで、渋滞時の運転の疲労はかなり抑えられるようです。もっともそうしたシステムの搭載された車をお持ちの方ばかりではないので、いずれにせよ渋滞は多くのドライバーや同乗者にとって不快なものです。

 そんな渋滞の解消方法としては、道路や高度道路交通システムの整備、人工知能やペースメーカーの活用などいろいろな方法が考えられていますが、中でも一番インパクトのあるアイデアは、空飛ぶ自動車ではないでしょうか。世界のあちこちで空飛ぶ自動車の開発が進んでいるというニュースが流れ、一部の国や自治体では対応する法律や保険等のシステムの検討も進んでいるそうです。

 大阪府では産官学連携により、2023年の実用化を目指すとしており、そう遠くない将来に夢の乗り物が実現しそうな気配の一方で、新型コロナウイルス流行以来、人々の移動のリスクに注目が集まり、アフターコロナの時代には、必要不可欠な場合を除いて、人の移動を極力控えるような風潮も生まれてきそうです。

「(直線だけでなく)どこでも速い車を造るなら、軽い車を造ればいい」というロータスの創始者コーリン・チャップマンの理想とは裏腹に、近代の国産自動車は、安全装備や電子装備などにより、車重は次第に重くなり、いまやちょっとした高級車やミニバン、そして流行のSUVになると2トンを超えるものまで登場しています。

 単なる空飛ぶ乗り物ならばまだしも、空飛ぶ自動車となると、自動車としての基本性能も保持しなければならないでしょうから、高機能な樹脂などを多用しても、少なくとも1トン近い重量にはなると思われます。そんな重量物がビュンビュンと飛び回り、ただでさえ狭い都市の空をさらに狭くしてしまう未来予想図は、少しぞっとする風景でもあります。

 1トン近いものを飛ばすとなると、高効率の反重力システムでも開発されない限り、プロペラなどによる空力頼りでは、相当のエネルギー消費も予想されます。BMWなど、一部のメーカーでは内燃機関を用いた空飛ぶ車を実験していますが、今後内燃機関への風当たりは厳しくなるでしょうから、当面はモーターを利用したシステムとなり、航続距離を考えると相当な重量の蓄電池が必要になると予想されます。

 とはいえ、かつて手塚治虫氏が想像した、高層ビルの谷間を高架道路が走る風景も、当初は夢物語と思われていたそうですが現実のものとなりました。現時点の技術では難しくても、開発を繰り返すことにより、やがて夢の動力源が開発され、二次元で培った運転支援システムや自動運転システムが、空の安全にも寄与するようになり、気が付けば夢の乗り物がそこら中を飛び回り、渋滞など存在しない未来が訪れるのかもしれません。

 高い所が苦手の私としては、これからは先進国の人口も減ることだし、開発競争で得た新技術で、物流など、もっと別の形の夢を実現してほしいと願う次第です。