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せんそうを つくらない

音無祐作

 先日、第二次世界大戦中の日本の物理学者たちによる原子力爆弾の開発を描いたドラマとドキュメンタリーを視聴しました。広島に原爆が落とされた直後に軍部などが「新型爆弾」と受けとめていることなどから、日本でも原子爆弾に関する知識は備わっていたと聞いたことがありました。アメリカより3年ほど遅れた基礎研究レベルだったとはいえ、当時の日本軍にはまだ、アメリカ本土や艦隊上空まで原爆を運搬する航空機や制空権がなかったことを考え併せると、万が一にも製造に成功していたらどのような使い方をされていたことかと、さらに恐ろしくなります。

 8月は毎年、戦争の悲劇を語るドラマや映画が多く放送されます。子供向けでは、かつては「はだしのゲン」「火垂るの墓」、そして最近では「この世界の片隅に」などが放送され、子どもたちに戦争の悲惨さを教え、二度と繰り返してはいけない過ちだということを教えてくれます。

 絵本の世界でも、日本と中国と韓国の絵本作家が協力して作った「日・中・韓 平和絵本」シリーズというものがあります。その第1期、2011年に刊行された浜田桂子氏の「へいわってどんなこと?」という作品も、NHKで紹介されていました。

 作品の冒頭、作者は当初「へいわって、ばくだんをおとすひこうきがとんでこないこと」と書いたそうですが、他の国の絵本作家らから「浜田さんは気づいていないけど、それが日本人の意識」という意味の指摘を受け、「へいわってせんそうをしないこと」と、ことばを改めたそうです。

 わたしたち日本人が意識する「戦争」は、東京などの都市空襲や沖縄戦の悲惨、そして、広島、長崎の原爆など、「されたこと」を悲しむ視点が多いように感じられます。6月23日、8月6日、8月9日、8月15日、これらの日には、戦争を知らない世代も毎年、黙とうしているかもしれません。でも、9月18日や12月8日が何の日か、すぐに思い浮かぶでしょうか。

 近年の政治家たちが、積極的平和主義と嘯き、やれ陸上イージスだ敵基地攻撃能力だ、防衛のために空母保有が必要だと唱えますが、かの大戦も日本国民の多くに「侵略」という加害者意識はほとんどなく、手にした満蒙の権益と現地に送り込んだ日本人たちを守ることを「防衛の大義」にすり替え、突き進んでしまったものと思います。

 広島の死没者慰霊碑に刻まれた、「過ちは繰り返しません」の「過ち」とは何なのか。

 9月18日は満州事変の日。すなわちそののち14年に及ぶ長い戦争の発端となった日です。同じく絵本で、2004年に刊行され話題となった「戦争のつくりかた」という作品がありますが、その言い方を借りれば、「戦争がつくられた日」。

 この日こそ、私たちは犠牲になった方々はもちろん世界中へ向けて、「過ちは繰り返しませんから」、「戦争を二度とつくらない」という誓いを新たにすべきではないでしょうか。


1931年 9月18日/中国侵略・満州事変  1941年12月 8日/パールハーバー奇襲‣日米開戦

1945年 6月23日/沖縄慰霊の日     1945年 8月 6日/広島原爆の日

1945年 8月 9日/長崎原爆の日     1945年 8月15日/無条件降伏・敗戦