論 考

軽率な前田建設の経営陣

 週刊RO通信no1343で「前田道路の捨て身の決意」を書いた。前田建設の敵対的TOBへの対抗策として前田道路が、3月期に535億円を特別配当する。これは手元資金の6割に相当する。

 2月27日、前田建設はこれに対してTOB期日を3月4日から12日に延長した。すると前田道路は直ちに記者会見で、同じ道路業界のNIPPOと資本業務提携の検討入りを打ち出した。

 前田建設が掲げるシナジーが期待できない、というのが前田道路の主張であるがさらに踏み込んで、NIPPOとの提携のほうが、確実にシナジーが期待できると理論的にさらなる反論を加えたわけだ。

 前田道路経営陣は、特別配当を発表したときに、相手が次はどう出るか、しっかり研究していたようだ。1つの手を打つ場合には、次の手、さらに次の手を考えておくのが戦術的巧者である。

 現実的な研究が不十分なままに、敵対的TOBに踏み切った前田建設経営陣と比較すると、前田道路経営陣の巧者ぶりが光る。

 合体すれば経営業績が上がるという極めて単純な理屈で前田建設が仕掛けたTOBである。企業合併というものは、経営の質をどうするかについて徹底して論議しなければならず、建設と道路の間で、まったく話が進んでいなかったなかでTOBに踏み切った前田建設経営陣は責任を問われても仕方がない。 

 そもそも、実際に働くのは従業員である。組合はじめ従業員はTOB反対だ。しかも、前田道路の協力会社もTOB反対である。前田建設がきちんと撤退できるかどうか。これまた、前田建設経営陣の力量が問われる。