月刊ライフビジョン | ビジネスフロント

働くプライドを取り戻そう

すぎかふん

 最近の日本人の働き方を、カモにされている消費者の視点で振り返ってみる。

 雇用されて働く人には自分の時間がない。考えている暇がないから流される。しかし自分の労働に意味はあるのか、いったい何に貢献しているのか、その自覚のないまま胃袋を盾にとられ、「公序良俗」の道に悖るような、情けない気になることは無いのか。例えば…。

 ケース1 ナショナルフラッグの航空会社からメールが来た。「お誕生日おめでとうございます」。搭乗の際に届けた生年月日を営業ツールに使うのは反則だろう。かつ、知らない人から機械的に、お祝いと称して社内共有メールに誕生日を晒されるのはプライバシーの侵害だ。もちろん、「お客様のご意見欄」に「ご意見拝聴」させてやった。

 “バースデーメールを頂きました。登録しているのは職場のメールです。不特定多数にプライベートな生年月日を公開されて迷惑しています。商業上の誕生祝を頂いて、プライバシーを侵害された気がします。”

 めげない返事が返ってきた。

 ご不快の念をおかけいたしましたこと、お詫び申し上げます。お誕生日を迎えるお客さまへ弊社より年に1度お祝いをさせていただきたく…、今後希望されない場合Webサイトにて承って…、会員情報をお手続きいただけない場合は、当方で配信停止手続きを承りたく存じますが、個人情報保護のため、ご本人様確認が必要となります。改めて会員ログインのうえ…。出口のない応答の当番にあたった人には同情を禁じ得ない。

 ケース2 めったに着信のない携帯電話が鳴った。発信者はdocomo。お使いの携帯電話は生産終了になる、スマホに取り換えないか。「携帯は着信も通話料を課金されるのですよね」「いえ、この電話は0120だから無料です」。いくら無料だと言え、電話会社が業務上知りえた個人情報、つまりこちらの携帯番号に自己宣伝を仕掛けてくるのはどうなのか。答えは、「個人情報の取り扱いについては、HPをご覧ください。」この人はもう、機械?

 ケース3 銀行から職場に、取引口座の住所変更をしてほしいとの電話。新入社員時代の口座をずっと使っているから、名寄せして今の職場の電話番号を特定したのだろう。お近くの支店までと誘われてのこのこ出頭すると、奥まった部屋に案内された。何事か。

 「ご住所の変更をお届けください。」「生涯借家で転々としているのでその必要はありません。」届けなくてもちゃんと電話で呼び出したではないか。すると本題が始まった。老後の生活設計は? 老人施設のご予定は? 遺産相続もそろそろお考えになってはいかがですか。

 きれいな応接室に老人を呼び出し、平均より高い給料をもらいながらおためごかしに不安をかき混ぜて、やっていることはオレオレ詐欺と同じじゃないか。それにしても、もっと本物の金持ちを狙え。

 宣伝メールもfaxも他人の領域に許可なく闖入し、囲い込まれた個人はカモにされている。個人情報なんて、銀行からしてズルズルだ。PCのメールには、すぐに営業で使える法人や企業・店舗の情報を格安で販売するとして、タウンページ、全国病院・学校データ、楽天、Yahoo、不動産、弁護士等のリストに値段をつけて広告する。これらのすべてに、生活のためにと従事する人たちがいる。

 労働に対する公平な、正義の分配はゆがめられている。国民の富を環境破壊や武器に投入する、腐った政治に刮目しよう。人権侵害まがいの働かせ方、儲け主義一辺倒の経済活動から自らを解放するのは、当事者たる自分だけだ。

 働くブライドを取り戻そう。「労働」を自分の手に取り戻そう。労働こそが社会の富の源泉なのである。