論 考

Brino

 イギリスは下院総選挙活動に入った。ところで、

 議長を10月末引退したバーコウ氏が外国人特派員向け記者会見でおこなった発言が興味を引く。いわく「EU離脱はイギリス外交上の過ちで、議会は今後少なくとも5年、さらには15年にわたってBrexitの論議をすることになろう」

 いま、イギリスでは「Brino」という言葉が登場している。「Brexit in name only」、つまり名ばかりBrexitであるという意味の造語である。

 すでにEU離脱をしてもイギリスの貿易上にはメリットがないどころか、不利益が大きいということが理解されている。

 つまり、離脱すれば、EUとの貿易はできないから、イギリスは各国と個別に貿易交渉をしなければならない。これは、一朝一夕にはできない。

 だから、それができるようになるまでイギリスはEUの単一市場と関税同盟に留まり続けねばならない。離脱しても、2020年12月まで移行期間か認められているが、さらに最大2年間の延長が可能である。

 離脱しても、議会では離脱後の体制整備のための論議が延々と継続するだろうというわけだ。

 その間、イギリスはEUに「会費」を納め続けねばならないが、あらゆる決議に対しては参加できない。

 おそらくバーコウ氏は、このような先の読みによって、15年間にわたって議会は論議を続けねばならないと指摘したのであろう。