論 考

無風流すぎるトランプ流

 アメリカはパリ協定の離脱を通告した。

 トランプ流を短くいえば「破壊」である。創造するには破壊しなければならないが、困ったことに何を創造したいのかさっぱりわからない。

 トランプ流は幼児の積み木崩しによく似ている。営々として積み上げたものを気分に任せて崩す。傍目には崩す快感のみが見える。

 トランプ的公約からすれば次に作るのは「壁」である。米国代大統領J・モンロー(在職1758~1831)が「モンロー・ドクトリン」を発したのは1823年であった。まるで196年前へ戻ろうとするみたいだ。

 いかにアメリカンドリームの幻想をばらまこうとも、国全体が閉じこもりになってしまっては、やがて後悔するしかない。

 漱石『草枕』を読む。この詩情は、アメリカならば「大草原の小さな家」に通ずるであろうか。漱石さん(1867~1916)は、「住みにくさが嵩じると安い所へ引っ越ししたくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生まれて、絵ができる」と書いたが、当方には詩が生まれない。遺憾である。

 次の大統領選は、「破壊」と「壁」に対する理性の鬨の声を上げてほしい。