論 考

失敗学

 1941年12月8日(月)、NHKのラジオ放送は6時のラジオ体操で始まったが、6時半の天気予報はレコード音楽に変わった。7時の時報に続いて、臨時ニュースで大本営発表「太平洋戦争開戦」を報じた。

 この日以来、1945年敗戦後まで、天気予報は放送されなくなった。気象は軍事情報と密接につながった機密というわけだ。

 国民に気象情報を隠しても意味はないし、国民生活に大きな不便が生ずるが、そんなことは考えない国家権力の体質であった。

 IOCが、東京五輪のマラソンと競歩を札幌で開催するというので、大騒動だ。五輪招致に際して、競技に最適な条件などと誇大宣伝しても、日本の気象条件を隠しおおせるわけでもない。

 都知事の小池氏が連合東京大会の挨拶で、「(北がいいのなら)北方領土でやってくれと、連合に言ってほしい」などと憤まんをぶつける与太話をやった。楽屋落ちの類だ。

 地震列島、台風列島、水害列島のニッポンの各界リーダー諸氏が、招致さえすれば、おカネはいくら使おうが、なにが起ころうが、とにかく「やっちまえ」の精神で取り組んできたように見える。

 五輪貫徹だけの領域しか考えない。その他のことは考えない。考えないことはありえない。かくして想定外の問題が発生するという構図である。

 本日の朝日新聞に畑村洋太郎先生が「失敗学」の蘊蓄を話しておられる。