論 考

敵は裏切らない

 親しい友人に裏切られてがっかりした体験は案外少なくない。そこで「敵は裏切らない」という言葉を頭の片隅に記しておきたい。

 いま、トランプ氏がシリア国内の非公式な同盟関係をもつクルド人勢力を裏切ったので、チャンス到来とばかり、トルコのエルドアン氏が越境してシリア内クルド人勢力を攻撃している。

 オバマ氏が、2011年にイラクから米軍を撤収した。そこへISが台頭して大騒動になった。ISと戦わせるために、シリアのクルド人勢力に梃入れした。クルド人勢力中心の民兵組織シリア民主軍SDFは、ISとの戦闘で1万人の犠牲を出した。米兵は5人であった。

 1975年、ニクソン氏の時代に、米国はイラクのクルド人勢力の蜂起を支援していた中央情報局CIAの支援を打ち切った。

 クルド人は、イラン系アジア人で国を持たない。トルコ、イラク、イラン、シリアなどに分散している。大方はイスラム系スンニ派である。

 クルド人の弱みに付け込んで好き放題に利用するのは、昔からの米国流だ。もちろんトランプ流は「本当に本当の所」がわからないのであるが、米国流の1つであることは疑いない。

 米国を世界の警察官などと考えるべきではない。